定時を超えた業務は「自発的行為」とみなされる
教職の「特殊性」を根拠に、給特法は給料月額の4%分を「教職調整額」として支給するよう定めている(第三条第一項)。
1966年度に文部省(当時)が実施した「教員勤務状況調査」で、1週間の時間外労働が小中学校において平均で2時間弱であったことから、4%という数値が算出された。
そして教職調整額を支給する代わりに、「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」(第三条第二項)。「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」には、一部の限られた臨時の業務(いわゆる「超勤四項目」と呼ばれ、校外実習などの実習、修学旅行などの学校行事、職員会議、非常災害等を指す)を除いて、「原則として時間外勤務を命じない」ことが明記されている。
給特法の下では、教職調整額の支給と引き換えに、賃金と労働時間の関係性が切り離された。どれだけ労働に従事しても、給与は変わらない。2006年の文部科学省の資料では、定時を超えた業務は、その「内容にかかわらず、教員の自発的行為として整理せざるをえない」(中央教育審議会の資料「教員の職務について」中央教育審議会「教職員給与の在り方に関するワーキンググループ」第8回議事録・配付資料「教員の職務について」、2006年11月10日)。
定時を超えた業務は「自発的行為」とみなされ、正式な時間外労働として取り扱われることはない。
これが第一に、現場での時間管理を不要にした。残業時間をカウントする直接的な意味がなくなり、その結果、残業時間数がわからず、またその増大も見えないままとなった。1966年の「教員勤務状況調査」以降、国による同様の調査は、2006年の「教員勤務実態調査」まで40年もの間、実施されることはなかった。