「子どもの登校完了時刻と教員の始業時刻が同じ」という意味不明さ

下校時刻だけではない。そもそも全国的に、子どもの登校完了時刻と教員の始業時刻が同じであるケースが多く見られる。

子どもが登校を完了しているということは、それよりも前の時刻に、子どもは学校に到着している。すなわち、教員もまた子どもの登校完了前に、業務を開始させている可能性が高い。

とりわけ小学校では、低学年であればなおのこと、教員は子どもから目を離すことができない。子どもの登校完了前から教室に入り、当日の授業等の準備をしつつ、子どもを迎え入れる。

東京都が2018年6月にユーチューブ上に公開した、「東京の先生の一日」と題する作品がある。紹介文によると「この動画では、東京で教員として働く魅力とやりがいを垣間見ることができます」という。動画は、「児童が登校するまでの間は、どんなことをしていますか?」との問いかけから始まる。子どもの登校完了前から、業務がスタートしていることが確認できる。

動画の中で、ある小学校教諭は、「教室に入ったときに、さわやかな空気が入るように換気」をしたり、「何の活動があるのかっていうのを、子どもたちにわかりやすいように、視覚的に黒板に表したり、今日1日の時間割を貼ったりする活動をしています」と回答している。

別の小学校教諭は、「当番の子たちといっしょに、朝の挨拶活動」を行うことが大事な教育活動の一つであると述べている。

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根本からして、時間設定がまちがっている

いずれにおいても、子どもが登校するまでの間に何らかの作業を行っていることが、所与の前提とされている。これは、東京都に限らない。全国の学校で、子どもの登校完了前に、教員の業務は始まっている。

学校における子どもの生活は、朝と夕刻における教員の定時外の業務が前提となって、組まれている。

本来であれば、始業時刻→子どもを迎え入れるための準備→子どもが登校→授業等の業務→子どもが下校→各種業務→終業時刻という流れ、すなわち、教員の始業から終業までの中に子どもの学校滞在時間が設けられるべきである。

ところが現在は、その逆で、子どもの登校開始(一人目が学校に到着する)から下校完了(最後の一人が学校を出る)までの中に、教員の始業・終業時刻が設けられている。根本からして、時間設定がまちがっている。

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