定額働かせ放題―残業代が合法的に支払われない
給特法は、1971年に制定され、1972年に施行された。制定当時は、公立校だけでなく国立校も対象とされていたが、2004年の国立大学の独立行政法人化にともない、国立校は給特法の対象外となり、同法は公立校の教員のみを対象とすることになった。国立校と私立校の教員には給特法が適用されることはなく、民間企業と同様に労働基準法の下で、残業を含む労働時間全体が管理されている。
給特法は第一条でその「趣旨」を、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件について特例を定めるものとする」と記している。公立校の教員の職務と勤務態様は特殊であるから、一般の民間労働者や私立校・国立校の教員とは別の法律で、給与のあり方を定めるという。
ここで言う特殊性とは、文部科学省の資料によると、具体的には「修学旅行や遠足など、学校外の教育活動」「家庭訪問や学校外の自己研修など、教員個人での活動」「夏休み等の長期の学校休業期間」などを指す(中央教育審議会初等中等教育分科会「教職員給与の在り方に関するワーキンググループ」第10・11回の配付資料4-2「教職調整額の経緯等について」、2006年12月)。
教員は学校外での活動も多く、また年間を通して学校という場に拘束される時期とそうではない時期がある。労働時間をカウントしようにも、教員の労働時間は厳密に管理することが難しい。
これをもって公立校の教員の業務には、民間企業の従業員や、私立校ならびに国立校の教員とは異なる「特殊性」があるとみなされている。
労働問題に詳しい弁護士の嶋﨑量氏の言葉を借りれば、「給特法により、同じような教員として働く国立や私学の教員には支払い義務が課される残業代だが、公立学校の教員にだけは合法的に支払われない」(嶋﨑量「公立学校教員の『働かせ放題』合法化する、理不尽な法律『給特法』変えるカギ」東洋経済オンライン、2022年5月17日、傍点は筆者)。
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