これ以上はないほど幻想的で美しい「子作り」

“うけひ”とは「神意を伺うための呪術的な行為」(三浦佑之『口語訳 古事記[完全版]』)で、あらかじめ条件を立ててから、神意を仰ぎ、事を判断する占いのことです。

ところが二人は前提となる条件を決めぬまま、さっそく子作りを始めます。
その子作りが、これ以上はないほど幻想的で美しいのです。

それぞれ天の安の河をあいだに挟んで向かい合って、まずアマテラスがスサノヲの腰に佩く十拳の剣を乞い受けて、三段に打ち折り、玉音もゆらゆらと天の聖なる井戸で振りすすぎ、嚙みに嚙んで吹き出した息吹の霧の中に、三柱の女神が生まれる。

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玉がゆらゆらと音を立てるのも揺れ動く二人の営み

次に、スサノヲがアマテラスの左のみずらに巻いた大きな勾玉の玉飾りを乞い受け、同じように玉音もゆらゆらと天の聖なる井戸で清めた上で、嚙みに嚙んで吹き出した息吹の霧の中に男神が生まれた。さらにアマテラスが右のみずらに巻いた玉飾り、鬘に巻いた玉、左手に巻いた玉、右手に巻いた玉も、それぞれ乞い受け、そのたびに同じようにすると、それぞれの息吹の霧から男神が生まれ、合計五柱の男神が生まれる……。

互いの持ち物を交換し、それをもとに子を生むという、体外受精のような出産行為であるわけですが、二人が装飾品を一つずつ外していく様は、愛し合う男女がネクタイやピアスを外して性行為の準備段階に入るかのよう。玉がゆらゆらと音を立てるのも揺れ動く二人の営みを伝えるかのようでエロティックです。