自由に遊ばせる目的の催しで干渉しまくる親

これらが子育ての三大問題であるというひとつの結果は、私自身がずっと感じてきたことと一致しました。この調査に協力してくれた親子を含むアクシスの会員さんにも、病院の外来で出会う親子にも散見される要素でした。ちなみに協力してくれた親子は、私たちアクシスがかかわることですべての値が見事に良くなりました。それについては後の章で詳述することにします。

思い起こせば、木工工作で「ほら、その出っ張った角に」と指示した母親も同じです。自由に遊ばせ見守るのが目的のイベントに参加しているにもかかわらず、干渉しまくるという矛盾がうかがえます。親御さんたちはわが子への愛は非常に深い。ただ、少しだけ愛情の方向性や表現方法が間違っているのです。

「育てられたように育てたい」「自分を認めてくれなかった母親の呪縛から逃れられない」自由に遊ばせるイベントで子供に指示を出しまくる高学歴親たちの身勝手_4

「育てられたように」育てようとする高学歴親

では、干渉・矛盾・溺愛の三大リスクを抱えるのは、どんな親でしょうか。

ある自治体の支援機関で、ヤスコさんという女性に出会いました。会社員で役職に就き、輝かしいキャリアを積んでいました。夫も一流企業勤務。私立中学校に通う長女と、同じく私立の小学校に通う次女を育てる、絵に描いたような高学歴夫婦でした。

それなのに中学校に通う長女の暴力に悩んでいました。気に入らないことがあると暴れ出すため、ヤスコさんも娘に手を上げてしまうと言います。

最も衝撃的だったのは、長女が次女の制服をハサミで切ってしまったことでした。切り刻まれたスカートやブラウス。泣き叫ぶ次女。ヤスコさんは激しい怒りにかられ、長女に暴力をふるってしまいました。

私は正しい子育てをしようってずっと思っていました

実はヤスコさん自身、妹と2人姉妹で実母との間に深い確執がありました。長女であるヤスコさんは必要以上に厳しい態度をとられていたのに対し、妹は明らかに贔屓されていました。感情の起伏が激しい母親の矛先はヤスコさんに向かっていました。母親の機嫌を損ねないよう気を遣う長女に対し、次女である妹は何をしても許されるのです。母親からの愛情が感じられず、辛い子ども時代を送っていました。

「すごくしんどかった。だから、私は正しい子育てをしようってずっと思っていました。自分と妹が育てられたような育て方をしてはいけない。私はちゃんとした子育てをするんだ。そう思いました」

実母を反面教師にしてきたはずなのに、結局おまえは同じ子育てをしていたではないか――切られて布の山になった制服が、ヤスコさんがやってきたことを全否定しているかのようでした。