基本給30万円なら1万2千円の支給で数十時間の残業
こうした労働環境は特殊なケースではない。
文科省が全国の教育委員会に対し、教員の勤務実態を調べた調査では、2022年4~7月に時間外勤務時間が月平均45時間を超えていた割合は、中学校では54%、小学校では37%だった。
文科省は教員の働き方改革や待遇改善に取り組むべく、5月22日、文科相の諮問機関である中央教育審議会に対し、対策を諮問した。
検討課題のひとつが、「定額働かせ放題」と言われてきた働き方だ。
公立学校の教員には、基本給の4%が「教職調整額」として支給されているが、いわゆる時間に応じた「残業代」は支払われない。基本給が30万円であれば、1万2千円の支給で数十時間の残業をしている教員が多数いるのが現状だ。
自民党はすでに教職調整額を4%から10%以上に引き上げる提言を示しており、中教審では、この教職調整額の引き上げについても検討される見通しだ。
ただ、この提言について現場の教員の思いは複雑だ。
前出の教員はこう訴える。
「教職調整額が引き上げられるなら単純にうれしいですが、残業ありきの議論ではなく、まずは基本給を上げてほしい。
『教員は待遇がよくない』というイメージや現状を変え、離職を減らし、優秀な人材を確保する必要があると思います」
関東地方の小学校で5年生の担任として働く30代の男性教員は「現状では、給与が仕事の負担に見合っていません。教職調整額が増えるならありがたい」と歓迎するが、同時に働き方改革も重要だと指摘する。
「運動会の種目を絞って時間を短縮するなど、仕事のスクラップ・アンド・ビルドは少しずつ進んでいますが、抜本的な改革はまだまだです。
人員配置の充実も課題だと思います。私の勤務校では、音楽・体育などの教科の専科の先生はほぼいません。一部を除いて自分がすべて授業しているので、専科の先生の配置ももっと進めてほしいと思います」