「胸、触っていい?」「手、縛っていい?」
「予算通ったら浮気するか」

それらを紹介する前に、まずはセクハラ騒動のあらましを振り返っておく。

『週刊新潮』は「ろくでもない「財務事務次官」のセクハラ音源」と題する特集記事を掲載、福田が女性記者に飲食店で「胸、触っていい?」「手、縛っていい?」「予算通ったら浮気するか」などとセクハラ発言を繰り返していたことを報じた。その翌日には、福田と思われる音声データがネット上に公開され、言い逃れが難しい状況に追い込まれた。

それでも福田は、「あんなひどい会話をした記憶はない」と完全否定する姿勢を強調する一方、「音声は自分のものと認めるのか」と突っ込まれるや、「自分の声は自分の身体を通じて聞くのでよくわからない」などと意味不明の弁明に終始した。話が話だけに、質問の矢が放たれれば放たれるほどボロが出るのは自明だったが、事務次官にまで昇り詰めた人物がこれほどの醜態を演じるとは、戦後入省の次官経験者のほぼ全員を直接知る筆者にとって、「これが今の次官の実態なのか」と阿呆らしさを通り越して哀れささえ感じた。

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そしてこうしたハレンチな言葉の数々以上に、一記者の固定観念を刺激したのは、福田が随所に差しはさむ「僕はもう、仕事なくなっているから」「やることがないから」「俺はいま暇だから」……といった自嘲とも、投げやりとも取れる発言だった。次官とはそんなに暇な役職なのか―大蔵省担当の駆け出し記者の頃、若手のキャリア官僚から聞かされた言葉の断片がふと胸の内をかすめたが、その点については次章で詳述するのでそちらを参考にしてもらいたい。