#1
#3
#4

財務官を含めて3人いる財務省の次官級幹部のうち、2つのポストが空席

セクハラ騒動で事務次官を辞任した福田淳一には「事務次官」の存在意義とは何かを根本から問い直す課題が潜んでいる。それを明らかにするために、82(昭和57)年同期入省の佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官の辞任劇にも触れておく必要がある。

学校法人森友学園への国有地売却をめぐる公文書改竄問題で、佐川が長官を辞任したのが2018年3月9日。ナンバー2の次長が職務を代行する人事が発令されたものの、後任が決まらないままいたずらに日々が過ぎていった。

佐川辞任から1ヶ月半後の4月24日、今度は次官の福田が辞任に追い込まれる。ここに、事務次官と国税庁長官という財務省ツートップが同時に不在になる異常事態が生じた。次官の職務代行は矢野康治官房長(前次官、85年)が務めたが、こちらも後任が発令されないままずるずると月日が経過した。財務官を含めて3人いる財務省の次官級幹部のうち、2つのポストが空席になる前代未聞の状態が長く続いた。

〈ジブリアニメ大解剖〉名作『風立ちぬ』はなぜ主人公の声優を庵野秀明に?「自分の映画で初めて泣いた」という宮崎駿=堀越二郎の真相とは_1
すべての画像を見る

「トップ2人が欠けても、組織はそれなりに回るもんだね」

そして、2人の後任人事が発令されたのが、毎夏の恒例人事の時期に当たる7月27日だった。佐川国税庁長官辞任から約4ヶ月半、福田次官辞任から約3ヶ月の時が流れ、ツートップ不在は実に3ヶ月間に及んだのである。

当時の財務省内では、こんな皮肉交じりの会話がひそかにささやかれたという。

「トップ二人が欠けても、組織はそれなりに回るもんだね」

この指摘を喜ぶべきか悲しむべきか、言わずもがな、悲劇的な現実と受け止めざるをえないが、この会話には続きがあり、「まあ、次官は所詮名誉職だから……」と、冷ややかな結論で話は締めくくられたそうだ。