「ここはもうちょっと赤面させてください」と言われました

——作画は最初からデジタルツールでされていたのでしょうか。

はい。『氷の城壁』の1話を描いている途中で、板タブ(※手元のタブレットに専用のペンで描くと、パソコンのモニターにそれが映る仕様のデジタルツール。「液タブ」は直接モニターの上に専用のペンで描く仕様)が壊れてしまって、それ以降ずっとiPadです。

そのときは会社員で、趣味で描いているだけだったので「新しく板タブとか液タブを買っても、そんなに使うかなぁ」という迷いがあって。でもiPadなら絵を描かなくなっても使えるし、と思って買ったら、思った以上に気軽に使えてすごくよかったんですよ。

パソコンを起動するとなると「さぁ頑張るぞ!」と気合を入れる感じがありますが、iPadならそれもないし、板タブと違って画面に直接描けるのもいい。気に入らなかったら保存しなければいい、という気軽さもあります。

——『氷の城壁』はオールカラーですが、ご自分で色をつけていたのですか?

連載の半分以上は1人でやっていました。途中から色のパレットを渡して、人に頼むようになって。美麗イラスト!という感じのウェブトゥーンだと塗り方に作者の癖が出ると思いますが、私の場合はバケツ塗りが多いので。

——色の濃淡をつけずに単色を流し込む塗り方ですね。『正反対な君と僕』は白黒ですが、たまに色がついているコマがありますよね。その色味がとても今っぽくてかわいいです。

「『ジャンプ+』で連載できることなんてそうないだろうな」と思ったので、可能な遊びは全部やって帰ろう!と思っていろいろやってみています(笑)。

——シャボン玉などたくさんのおもちゃに色がついているコマを見たときに、すごくテンションが上がりました。カラーにするコマはどんなふうに決めるのですか?

【漫画あり】《「マンガ大賞2023」第3位》話題沸騰の青春ラブコメ『正反対な君と僕』作家・阿賀沢紅茶インタビュー「きれいなだけの恋愛漫画が刺さらなくなってきた」_1
『正反対な君と僕』より
漫画を読む

「どこに色つけてんねん」みたいなところがカラーだと、ちょっと笑えるかなと(笑)。決めゴマっぽい感動的なシーンがいきなりカラーになるのは、今の絵柄とか話のテンションとは合わないと思うんです。「ここやで!」「どうぞ感動してください!」みたいな感じになりそうで、照れくさいので…。

——照れとの闘いがあるのですね。

『氷の城壁』のときは、今以上に照れがありましたね。担当さんから「ここはもうちょっと赤面させてほしい」と言われたりしていました。それで、本当にちょっとだけ赤を足して送ったんですが「いや、変わっていないです」と言われて(笑)。

【漫画あり】《「マンガ大賞2023」第3位》話題沸騰の青春ラブコメ『正反対な君と僕』作家・阿賀沢紅茶インタビュー「きれいなだけの恋愛漫画が刺さらなくなってきた」_2
『氷の城壁』より。「赤面させてほしい」と言われた湊の顔

——(『氷の城壁』担当編集)もうちょっといけます、とお願いしました。

3回ぐらいやりとりをしましたね。今はもう「照れとかそんなん言ってられん!」という感じになりましたが(笑)。