「紙にただ描いてあるだけなんだ!すごっ!」

「『NARUTO-ナルト-』があったからここまで生きて来れた」と言い切る『サスケ烈伝』の木村慎吾。岸本斉史へのほとばしる愛とリスペクトと切磋琢磨_2
『NARUTO-ナルト-サスケ烈伝 うちはの末裔と天球の星屑』下巻 第7話

――ほかにはどんな研究をされましたか?

連載が完結した2015年に『NARUTO展』があって、その公式ガイドブックを今日持って来ているんですけど、岸本先生が当時作業されていた地元の図書館の席を再現したコーナーの写真が載っていて、席の周辺には岸本先生の仕事場に収められていた書籍やDVDが展示されていたんです。

僕の予想では「その本棚の中で、表紙が見えている作品が、岸本先生のお気に入りなんじゃないか」と思っていて。『HUNTER×HUNTER』とか『無限の住人』とか、クエンティン・タランティーノの映画とか『エリジウム』とか、『第9地区』や『ユージュアル・サスペクツ』とか。そういう映画や本の中で、自分がまだ見たことのなかったものを買って、読んだり見たりました。

――岸本先生への愛がすごいですね。


高校生の頃から、岸本先生と沙村先生を1~2年おきに、スマホのホーム画面に設定しているんですけど、友達に携帯を見せると「この人誰?」と不思議がられます。

――「『NARUTO』の絵ではなく、岸本先生ご本人のお写真なんですね。

ご本人です。今も岸本先生がホーム画面なんですけど、これは『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)で特集されたときに掲載された写真ですね。

――ちなみに『NARUTO展』で実際に原画を見て、どう感じましたか?

「紙にただ描いてあるだけなんだ!すごっ!」と思いました。

当たり前だし、頭では理解しているんですけど、実際に原画を生で見ると、フレームの奥に世界が広がっている、空気がある、質量がある、人物がいる、ということを、「説得力の暴力」で伝えてくる感じがして、すごく衝撃的でした。

――その「説得力の暴力」を突きつけられて、どう感じましたか?

嬉しかったです。もちろん、岸本先生がなさっていることは高度な技術なんですけど、「紙があれば、自分でも世界を作れるんだ」と実感しました。

自分はまだその域じゃないけど、頑張ったらそうなれるし、その材料はある。身につけさえすれば、いつか自分も出来るんだ、と。それまで見えていなかった部分がどんどん見えてきて、より立体的になってきた感じがしました。