時代の変化に合わせた『デジモン』ロゴ
『あの花』とは対照的に、変わることが効果を生んだ作品例として、『デジモンアドベンチャー』シリーズがある。
「『デジモンアドベンチャー』のアニメ第1作が放送されたのは1999年。当時のデジタルのイメージといえば“ドットの集合体”だったので、初期のロゴもそれに沿ったデザインでした。
しかし、2010年代以降の作品では“現代のデジタル感”を表現するため、あえて視覚効果を抑えたフラットなデザインになった。いろんな作品で“デジタル”を記号的に表現されることがありますが、今の若い子にはドットやテレビの砂嵐、ディスプレイの走査線みたいな、平成初期のデジタル表現は通じなくなっていますよね」
タイトルロゴからこれほど多くの情報が読み解けるとは驚きである。
一方で近年は、タイトルロゴから作品内容を限定させない作品も増えてきているそうだ。2022年の人気作、『リコリス・リコイル』もそのひとつ。
「『リコリコ』のロゴは、すっきりとした今どきのデザイン。とある喫茶店で働く少女ふたり組が主人公という設定もあいまって、『ゆるい日常ものかな』と思わされますが、本編にはハードなガンアクション要素が含まれています。
ロゴではあえてハードな要素を匂わせないことで、ファンの間口が広がったし、ロゴのたたずまいと本編とのギャップも面白い効果を生んでいると思います。
ロゴとアニメ本編のギャップでいえば、『魔法少女まどか☆マギカ』が好例ですよね。ロゴやキャラクターのデザインは、いかにも魔法少女ものっぽい可愛いデザインなのに、本編が始まってみると、ガラッとものすごくハードな展開で……。
このオリジナル作品ならではの、ミスリードさせる仕掛けもうまく機能したからこそ、あれほど大きなブームを巻き起こしたんじゃないでしょうか」
こうしたタイトルロゴは、具体的にどのようにつくられているのだろうか。内古閑さんがデザインを手掛けた、『月がきれい』という作品を例に解説してもらった。