2つの被爆地で続く闘い
本連載の第1回、第2回で紹介してきたように、今なお切り捨てられている人が広島にもいる。黒い雨被爆者たちの闘いは、内部被ばくによる健康影響を国に認めさせるという目的があった。その先に、自分たちだけではなく長崎や福島、そして世界中の核による被害者の救済につなげたいという思いがあったからだ。
その願いは、本当に果たされたのか? 現状を見ると、疑問を抱かざるを得ない。
国自らが上告を見送って確定させた広島高裁判決に沿うならば、長崎と広島で同じ結論が導かれなければならないはずだ。被爆体験者訴訟では、6月に専門家による証人尋問が予定されており、重要局面を迎えている。
三宅弁護士は言う。
「広島と同じく、長崎の被爆体験者も被ばくする可能性があった。その状況に変わりはない。広島に続いて長崎を救済し、福島につなげたいと思っているんです」
歪な地図、被ばくを否定する援護措置、そして広島との差別。何重もの苦しみが、長崎の被爆体験者にのしかかる。国は、従来の被爆者援護の考え方を見直した訳ではない。首相談話、国会答弁、そして訴訟における国側の主張からも明らかなように、被ばくを切り捨てる論理は今なお維持されているのだ。2つの被爆地で続く闘いを、見捨ててはならない理由がここにある。
次回も、長崎に降った「黒い雨」に焦点を当てる。広島での勝訴確定に背中を押されて、ある調査を始めた男性の思いをお伝えする。
文/小山美砂
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