「長崎に降ったものと成分が違うの?」

長崎「被爆体験者」の何重もの苦しみ 広島との分断を読み解く_4
被爆体験者が描いた絵。灰が浮いた水槽の水を汲み、生活に使っていた様子を伝えている=2022年12月15日、長崎市内で筆者撮影
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なぜ長崎の被爆体験者たちは、なおも援護を否定され続けるのか。

原告側弁護団の三宅敬英弁護士は、こう考えている。

「国は広島で負けてもなお、『内部被ばくの影響を認めたわけじゃない』との立場を崩していません」

被爆体験者訴訟における国側の主張を見ていると、広島の「黒い雨」訴訟で展開された内容と同質のものが多く登場する。

「広島・長崎の原爆は空中核爆発であり、(中略)降り注いだ放射性降下物は極めて少なかった」

「内部被曝による健康影響は、同じ線量(シーベルト)で比較した場合に外部被曝による健康影響と同等ないしそれ以下」

「100ミリシーベルトを下回るような放射線に被曝した場合については、それによって健康被害が発症し得るか否かも定かでなく、そもそも人体に何ら健康影響を与えない可能性も十分あり得ると考えられている」

広島の「黒い雨被爆者」を切り捨てるために使われた論理が、長崎の被爆体験者に向けても用いられていた。

国の立場は、確かに一貫している。広島高裁判決の上告を見送る際に閣議決定した菅義偉首相(当時)による談話でも、判決は「本来であれば受け入れ難い」とした上で、「『黒い雨』や飲食物の摂取による内部被曝の健康影響を、科学的な線量推計によらず、広く認めるべきとした点については、これまでの被爆者援護制度の考え方と相容れないものであり、政府としては容認できるものではありません」と、表明していた。

2023年2月の国会答弁においても、改めてこの立場を強調している。「長崎の被爆体験者も救済すべきではないか」との問いかけに対して加藤勝信厚生労働大臣は、「空気中や飲食物に含まれる放射性微粒子を体内に取り込んだ、こうしたことは(援護する対象として)容認できるものではない」と答えていた。