増え続ける噂情報の弊害
正直、これらの噂がどの程度真実かは、筆者にはわからない。
シリコンバレーで交流会などに顔を出すと、普通にApple社員に出会う。口の堅い社員が多いが、ゆるい社員もいる。そうしたところから情報が出てくるのはごく自然なことだ。実際、筆者自身もこれまで幾度となく社内エンジニアからさまざまな開発中製品の噂を聞いてきた。
たとえば、iPodが大成功したあとにAppleが音楽制作のための機器を開発していたという噂があった。これに関しては、Apple社内の複数のエンジニアや外部の関連している会社でも裏が取れた。
外部の会社からは「製品はほとんど完成している」と何度か聞かされたが、ついにその製品が発表されることはなかった。
いや、噂だけではない。Appleの場合、一度正式発表した製品ですら、出荷直前に開発中止になった例がいくつかある。最近ではiPhoneとApple WatchとAirPodsが同時に充電できる充電マット「AirPower」という製品がまさにそうで、発表だけされて製品化されなかった。
Appleは、たとえ製品がほぼ完成していても、出さずに引っ込めることができる会社だ。一度、出してしまった製品は世界中で大行列を作る人気商品になり、1年間で桁外れな数が出荷される。それによって、ブランドとしても大きな責任が発生する。
同社にとっては、ブランドにそぐわない品質の製品を出荷してしまうよりは、たとえ開発コストが無駄になったとしても、出荷を撤回したほうがダメージが少ない。
そう考えると、Apple関連の噂話は、話半分で見聞きしたほうがいい。無責任な媒体の中には、ただの噂話をあたかも既成事実かのように書いているところもある。
最近、製品購入後、「噂で聞いていたのと違う」といった類のツイートをしている人を見かけることがあるが、噂はあくまでも噂。公式情報ではなく、さすがのAppleもそこまでは責任は負えない。噂を信じて騙されてしまうことは、ある意味、その人の自己責任なのだ。