2023年で20周年を迎える「プリキュア」。今年はシリーズ初となる大人に向けた作品も始動しており、10月から「キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~」(NHK)の放送が決定。またシリーズ13作目の「魔法つかいプリキュア!」の続編も24年度に予定しており、周年イヤーにふさわしい盛り上がりを見せている。
変化し続けることで「らしさ」をなくしていく
――2018年の「HUGっと!プリキュア」では子育てがテーマ、その次作「スター☆トゥインクルプリキュア」では主要キャラクターの肌の色が褐色、宇宙人がプリキュアになるなど多様性を意識した作品づくりが目立っています。最新作「ひろがるスカイ!プリキュア」でも、シリーズ初のメインキャラクターとしての男子プリキュアが登場しました。このように「プリキュア」シリーズでは、先進的な取り組みが数多くなされてきました。
近年では嬉しいことにそう評価していただくこともありますが、別に多様性に関して特別に使命感を持って描こうとはしていません。ただし、「ふたりはプリキュア」当初から女の子らしさ、男の子らしさという言葉は絶対に使わないと決めていました。企画立ち上げ段階で西尾大介監督がジェンダーという言葉を使っていたことを記憶していますし、抑制的なワードはプリキュアに不必要だったんです。
女の子だからといってリーダーシップを取らないのは不自然ですし、なぜいけないんだと思っていたので、我々としては普通のことを描き続けてきたという感覚でしたね。
ただ付け加えるのであれば、変化を受け入れる体制は大事にしています。
――変化、ですか。
先に申し上げたとおり、新しいことを始めるときには何かと前例にとらわれたり、縛られたりしてしまうものです。なので、「プリキュア」シリーズでは、常に変化のある作品作りを心掛けられるよう、スタッフの出入りが多くなっています。だいたい1シーズンに200人ぐらいの製作スタッフがいるのですが、翌年のシーズンになると半分ぐらいのスタッフがごっそり入れ替わることもあります。
実際には核となるスタッフが残っているものの、ほとんどのメンバーが毎回毎回変わり続けているので、作品に関する意見は一人ひとり異なりますし、作品にかける熱量も大きい。議論が白熱し、コンセプト決定まで長い時間かかることも珍しくありません。
しかし、それって集団作業の醍醐味でもあるし、全く新しいプリキュアが誕生できる理由にもなると思うんですよ。挑戦し続ける姿勢は、新しいカットにつながります。そのため、逆にすんなりコンセプトが決まると、逆に「今年は大丈夫か」となって不安になっちゃいますよ(笑)。