プリキュアらしさもどんどん変わっていい

――1シリーズにそれだけ熟考されるとなると、プリキュアらしさを貫くのも大変そうです。

極端な話、それも時代に合わせて、どんどん変わっていけばいいと思っています。最近ですと2017年の「キラキラ☆プリキュアアラモード」はアクションをさせないというプリキュアでは異色とも言えるコンセプトがネット上で話題になりました。ですが、子どもたちの反応はよく、きちんと受け入れてくれましたね。

大事なことは、メイン視聴者である4歳から6歳の女の子が観て面白いと思ってもらえる作品を作るということ。どれだけ多様性に配慮した設定にしたとしても、子どもにとって憧れの存在や喜んでもらえる作品になっていないと意味はありません。子どもは正直なので、義務感から付けられた設定なんて作りものっぽいってわかっちゃいます。製作側からすれば、メインターゲットの子どもたちはとっても怖い存在なんですよ(笑)。

設定ばっかりこだわって盲目的になるのではなく、あくまで「自分の足で凛々しく立つ」ことを忘れず、子どもたちが喜ぶものの一環として多様性を取り入れられればなあと。

プリキュアが子育て、男の子がプリキュアに……異例づくしのプリキュアだが「多様性は意識していません。子供は怖いですから」と初代Pが語る本当の理由とは《プリキュアシリーズ20周年》_3
プリキュア初代プロデューサー・鷲尾天氏

――「ひろがるスカイ!プリキュア」では、メインキャラクターとしては初の成人プリキュアも登場しますし、10月からは大人向け作品である「キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~」(NHK)も始まります。プリキュアというと、女子中学生が主役を張ることが通例とされてきましたが、そうじゃくなる日が来るかもしれませんね。

プリキュアが子育て、男の子がプリキュアに……異例づくしのプリキュアだが「多様性は意識していません。子供は怖いですから」と初代Pが語る本当の理由とは《プリキュアシリーズ20周年》_4
シリーズ初の成人プリキュアとなる「キュアバタフライ」

そうですね。中学生って子どもから見れば少し親しみやすくてカッコいい存在になるので、主人公にぴったりの年齢だと私は考えていましたが、視聴者である女の子たちが受け入れてくれるのであれば、どんどん変わっていっても問題ありません。時代の波に合わせて子どもたちが憧れるプリキュアを描き続けることができればOKですので、スタッフには前例や使命感を覚えず、自由に発想してもらってほしいですね。