北九州監禁連続殺人事件「たたきまわされながら、松永が死んでなくてよかったと思った」自殺という嘘に騙された共犯者、緒方の悲劇。全裸にされ、家族とともに激しい暴行を受けて_1
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当時、松永は東篠崎マンション九〇×号室で暮らし、前年に父親が死に追いやられた広田清美さんは、その現場となった片野マンション三〇×号室での生活を強要されていたが、冒頭陳述には以下のようにある。

〈被告人松永は、直ちに片野マンションに赴き、同室の洗面所に閉じ込めていた甲女(清美さん)を同所から出し、東篠崎マンションに連れて行き、甲女に対し、「自分たちはここに住んでいるが、そのことは誰にも言ってはいけない。」などと申し向けて口止めした上、同室において被告人両名の長男の世話をするよう指示した〉

緒方は家を出る際、四歳の長男を松永のもとに残し、一歳の次男を久留米市に住む伯母に預けたことは、すでに記した通りだ。

冒頭陳述は続く。〈そして、被告人松永は、和美〔緒方の母〕及び智恵子〔緒方の妹〕を片野マンションに呼びつけて、被告人緒方や二男の所在を追及するなどして、平成9年(97年)4月8日ころ、取りあえず和美らから二男を片野マンションに連れ戻した〉

そこで緒方を連れ戻すために、夫の孝さん〔緒方の父〕に意見ができる和美さんを利用すれば、緒方一家をうまく操れると考えた松永は策を講じる。

〈被告人松永は、それまで同緒方に隠れて和美と連絡を取り合っていた際、和美に対し、同緒方が詐欺で指名手配にかかっていること、甲女の父の死体解体等に関わっていることなどをほのめかしていたことから、これを和美から孝にも話させ、世間体を気にする孝を不安に陥らせ、緒方一家全体で被告人緒方を取り戻さなければならないと思い込ませることにした〉

以来、松永は毎夜のように孝さん、和美さん、智恵子さんを片野マンションに呼び出すようになったのだ。そう記すと簡単なことに思えるかもしれないが、緒方家が住む久留米市から松永のいる北九州市まで、高速道路を使って片道約百キロメートルの道のり。

時間にして二時間近くかかることを考えると、大きな負担であったことは想像に難くない。さらに片野マンションにおいても、松永は緒方家の三人を追い込んでいた。

〈同人らに対し、明け方ころまでの長時間にわたり、被告人緒方が詐欺で指名手配となっている犯罪者であること、殺害された甲女の父の死体の解体・遺棄に関与したことなどの話をするなどして、それらの全責任を被告人緒方に押し付けた上、被告人緒方が逃走する直前に一緒にいた和美が同緒方を片野マンションまで連れ戻さなかったことが逃走の原因であるとか、和美が片野マンションの家財道具を勝手に質入れしたことが窃盗であるなどと因縁を付け、被告人緒方の逃走の全責任を和美に押し付けるなどして緒方一家を脅した〉