事前の取材で
感動し過ぎて涙する
──箱根駅伝ではどのように取材されるのですか?
箱根駅伝では、各チームの監督とエントリーした300人以上の選手全員にインタビューを行います。箱根駅伝担当のアナウンサーで分担し、1対1で、選手に話を伺います。
選手1人1人の頑張りや苦労など、その人に関する情報をまとめてアナウンサー間で共有し、当日の中継に向けてアナウンサーが伝える準備をするんです。
私も女子駅伝や中学校駅伝の実況をするようになってわかったのですが、取材した選手のことはなるべく多く伝えたいものです。
ただ、限られた時間のなかでそれを視聴者に伝えるには、レース展開に合わせて瞬時に適切な情報を選択する必要があるため、本当に入念な準備が必要になります。
──当日実況をしないアナウンサーも、取材に携わっているとは知りませんでした。
特に私は取材が楽しくて。ついつい熱が入ってしまい、取材後に情報をまとめているときに泣いてしまうことがあります(笑)。
──実況のやりがいはどんなところにありますか?
選手について実況するときには、少しでもその人の良さを伝えられたらいいなと思っています。
その選手が今どういった思いで走っているのかを伝えることができたら嬉しいですね。
あとはその瞬間が、選手やその家族、学校関係者、関わっている人全員の思い出にもなると思うので、気持ちを込めて実況しています。
──印象に残っている実況はありますか?
2021年の全日本大学女子駅伝で、1年生にもかかわらず区間記録を大幅に更新した選手がいたんです。
ただ、その後に怪我をしてしまって、苦しい時期を乗り越えて翌年またこの大会に戻ってきました。走れなかった時期の彼女の様子や思いを、ずっと傍で見ていた監督から聞いていました。
その選手の思いを、実況でできるだけ伝えられるよう努力しました。たとえ、怪我の前の記録に届かなかったとしても、今の彼女の全力を称えてあげたいという気持ちで実況したことが印象に残っています。