現地で感じたウクライナ国民の意識の変化
――ロシア侵攻後のウクライナ国民は、考え方が変わったのか?
「自分たちの血を捧げても取り返す」という一歩も引かない姿勢だ。国民の団結を感じるし、助け合っている。
侵攻前は、ウクライナの若者も日本の多くの若者と同じように「他人のことは関係ない」と考える人が多かったように思う。
キーウでは、避難してきた難民に自宅を提供している住民も多く、見ず知らずの人と共同生活をしている。
取材した若い女性は、「自分がここまでこの国を愛しているとは思わなかった」と話してくれた。
彼女は30代半ばで自ら志願して領土防衛隊に入って、広報官をしている。
合法的な手続きで独立国家になったにも関わらず、わけのわからない理屈で突然、ロシアが乗り込んできた。
例えると、インターンホンも押さずに玄関の扉を蹴破り、いきなり家族を撃ち殺し始めた、「冗談じゃない」とウクライナも武器を取って反撃したというのが、今回の構図だ。
自分の土地を取り返したい、守りたいと考えるのが普通だろう。
――日本国内での報道を見ていると、「民間人の死者を増やさないためにウクライナが白旗をあげたらいい」などという論客もいる。メディアが混乱を極めさせているとも感じる。
相手にしないほうがいい。事態を単純化すれば、それ以上でもそれ以下でもない。
メディアはいろんなことを言うだろう。それが仕事だから。報道に対して自分の頭で物事を考えてほしい。鵜呑みにしてはいけない。
ウクライナ国民からしてみれば、自国の文化や歴史がなくなる危機。安全圏にいる連中が発している言葉に惑わされるべきでない。
現地で実際に命をかけて国を守ろうとしている姿を見て、「白旗をあげたらいい」などと言えるだろうか。
私自身も、CNNやBBCなどの外国メディアの報道に対して、「そうかもしれないが、自分の目で確かめないとわからない」と常に思っている。
――だから現地に足を運んで確かめる。
外国メディアは文化的な背景を持って物事を見ていて、我々とは価値観が違う。だから自国のジャーナリストが必要だ。
海外の報道は通信社を使えばいいという考えもあるが、それでは十分な情報が取れず、正しいのかどうかを自分で判断ができなくなる。