いくら安くても
価格に見合わなければ買わない

おそらく多くの人が思い浮かべる富裕層の生活とは、衣食住にお金をかけた、俗にいう〝贅沢な生活〟ではないでしょうか?

毎日のように高級レストランで食事をして、シーズンごとに流行のブランド品を身につける。そのような印象をもっているのなら、それは明らかに間違いなのです。

「お金が増えると生活レベルが上がる」というのが一般常識ですが、これは必ずしも正しくありません。

ノーベル経済学賞受賞者である心理学者ダニエル・カーネマンらの研究結果によると、収入と幸福度は比例するものの、年収7万5000ドル(約800万円)で収入アップによる幸福度の上昇は、ほぼ頭打ちになるといいます。

一般の人からすれば、お金はあればあるほどいいと思いがちですが、そうとは限らないのです。

たとえば食費を2倍かけたからといって、人生の幸福度が2倍に高まるわけではありません。食べられる量には限りがありますし、質素な食事でも十分に満足できる人もいるでしょう。

私が思うに、富裕層はお金をかけるべき物事を見極め、必要以上の食費など、効果の見込めない支出は控えています。

これはケチということではなく、「いくら安くても価格に見合わなければ買わない」といったふうに無駄な支出を意識的に避けているということです。

私が相続税調査のときにまず気になったのが、庶民的な服装でした。見た目だけでは、億単位の資産を相続した人には見えません。

身につけている洋服のブランド名を尋ねたわけではありませんが、ユニクロや無印良品などのようなカジュアルなファストファッション風の服装が多かったです。

もちろん、税務署の人が来るからといって、オシャレをする人はあまりいないと思いますが、それにしても見た目が普通であるのは驚きでした。



文/小林義崇

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