「僕なら有力な批評家やコレクターを呼んであげられる」著名キュレーターが若手女性作家をホテルに呼び出し、肉体関係を迫り、暴言を浴びせ…日本の美術界にはびこる「ギャラリーストーカー」の闇_5
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被害の根絶に向けできることは?

一方で、被害をなくすために動き出すギャラリーも現れ始めた。

本書で触れられているのは、千葉市の「企画画廊くじらのほね」だ。作家へのプライベートな誘いや迷惑行為の禁止を発表した。
また、大阪市の「芝田町画廊」がギャラリーストーカー対策の具体例をTwitterで公表し、大きな反響を呼んだ。

作品を楽しむ鑑賞者として、私たちにできることはあるのだろうか。

「作家にとって安心できる環境づくりをしている画廊やギャラリー、美術館を支援していくことではないでしょうか。

そうした場所で私たちが作品を見たり買ったりすることが、結果的に業界を変えていくことにつながると考えています」

被害の根絶には、業界での実態がもっと広く知られていく必要がある。

「取材に応じてくださった方は、書籍が出ることによって、この業界が少しでも変わってほしいと、その一点で辛い体験を語ってくれました。

業界全体の問題をみなさんよく把握され、変えたいという思いが強い方ばかりでした。その声を受け止めて、みんなの問題として取り組むべきです」

取材・文/高山かおり
撮影/一ノ瀬 伸

ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害(中央公論新社)
猪谷千香
「僕なら有力な批評家やコレクターを呼んであげられる」著名キュレーターが若手女性作家をホテルに呼び出し、肉体関係を迫り、暴言を浴びせ…日本の美術界にはびこる「ギャラリーストーカー」の闇_6
2023年1月10日発売
1760円(税込)
単行本/227ページ
ISBN:978-4-12-005616-1
煌びやかな美術業界の舞台裏には、ハラスメントの温床となる異常な構造と体質、伝統があった…。若い女性作家を食い物にする美術業界の暗部をレポートする。『弁護士ドットコムニュース』掲載に書き下ろしを加えて書籍化。
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