みんなが面白いと言った人はどこかで日の目を見る(佐久間)
――面白い人は最終的に売れるということですか?
佐久間 最終的には売れますね。みんなが面白いと言った人はどこかで日の目を見ます。40歳までかかっちゃったりするけど、でもほかの仕事より悲しい思いをすることは少ないかもしれないです。賞レースも、この人たちが獲ってないとおかしいよねという人たちがほぼみんな獲ったから、若手が群雄割拠できるようになったし。
賞レース以外の道で生きたい人たちも、YouTubeとかで「自分のこれが面白いんですよ」という色を出せるようになっている。それきっかけで呼ばれる機会も明らかに増えてきています。お笑い界のレベルは総じて上がっているとは思いますね。
――マンガ界はどうなんですか? お笑いの世界のように最終的に売れるということはあるんですか?
林 マンガの場合、最初は読み切りを何本も何本も発表して、結果が出た人が連載に移行します。連載で面白くなかったらそれを打ち切って次の作品を描いて、そうやって3作目、4作目で当たる人もいれば、途中で諦めてしまう人もいて。何も言わずに消えてしまう人はたくさんいますね。
佐久間 お笑いの人たちの場合は、みんな最初に憧れるものがあって、そこにはなれないという挫折から始まることが多いんですよ。例えばハライチは、早い段階で王道だと売れるのに時間がかかると判断して、自分たちのこの部分がウケるからその部分だけでネタをつくろうと決めて、実際に売れました。
オードリーは、最初は普通に掛け合いの漫才をやっていたけど、全然ウケなくて、ウケているのは春日が間違えたところだけ、みたいなところに気づいて、そこを漫才にしたらブレイクしたんですよ。ただ、オードリーは20代のときのクソみたいな思い出があるから、それがバックボーンとなっていろいろな話しができるというのもあって。
自分に合わせた芸風を確立するのはタイミングによりますけど、それを確立できた人は絶対売れているという感じです。マンガ家さんの場合、それは作風というものに出てくるのかもしれないですけど。
林 そうですね。そのために何を選ぶのか、どんな絵でいくのかというものをたぶん探している人がほとんどです。絵に関しては変わることのできる範囲に限界があるんですけど、がらっと変えられる人もいますから。
佐久間 『東京卍リベンジャーズ』の和久井(健)先生とかそうですよね。『新宿スワン』を描いた人だけど、全然作風が違う。
林 言われないと気づかない人っているとは思います。それぐらい『東京卍リベンジャーズ』で少年誌の読者を意識した絵に変わりましたよね。
つづく
Photos:Teppei Hoshida
Interview & Text:Masayuki Sawada