売れて天狗になる人はだいたい若手の頃から
多少イヤなやつ(佐久間)

――新人の頃に出会った作家さんや芸人さんがやがて売れっ子になった場合、関係性は変わったりするんですか?

佐久間 僕は変わらないですね。もともとそこまで仲良くならないので。仲はいいですけど、プライベートを一緒に過ごすという芸人さんはほぼいない。だから、千鳥にしてもオードリーにしても、関係性はずっと変わらないままここまできています。

 打ち合わせと現場だけで会うっていう感じなんですか?

佐久間 そうですね。ただ、それが正解かどうかはわからなくて。芸人と一緒にゴルフに行ったり、飲みに行ったりするディレクターはたくさんいますし。たまに相談に乗って欲しいと言われてご飯を食べに行くことはありますけど、基本はプライベートは分けてますね。

――こっちは変わらなくても、相手が売れて天狗になるみたいなことはないんですか?

佐久間 天狗になるってことはあまりないんですけど、たぶん芸人さんはいろいろな現場で、いろいろな思いをして疑心暗鬼になることはあるんですよ。「その企画は本当に俺のことを思っているの?」とか「これをそのままやったら俺、スベるんじゃない?」とか。
急に売れると考える時間もなくなるから、どんどん自分しか信用しなくなっていくタイプの芸人さんもいるし、逆に他人に任せたほうがラクだからどんどん任せることになって主体性がなくなっていく芸人さんもいるし。結局、そのバランスが取れている人が残っているんですけどね。
ただ、昔と違うのは、今は『M-1』とか賞レースで優勝すると一気に仕事が増えるから、そういう人たちは半年ぐらい何にも考えられないぐらい働くので、その時期の接し方は考えます。僕が知る限り、売れて天狗になるみたいな人はないかな。
売れて天狗になる人はだいたい若手の頃から多少イヤなやつなんだと思います(笑)。

佐久間宣行(テレビプロデューサー)×林士平(『少年ジャンプ+』編集者) 【仕事術からエンタメの未来まで】炎の20,000字対談! 3_8

 僕、入社2年目ぐらいのときに『ジャンプSQ』の創刊メンバーで一番下っ端だったんですよ。編集長から好きな記事をやっていいよと言われて、会いたい芸人さんとゲームをするという企画を出したんです。その芸人さんというのが、すごく売れるちょっと前のバナナマンさんで、毎月1時間ゲームして、撮影して、終了みたいな、ただただ楽しい企画だったんですけど、バナナマンさんがカメラが回っているときと、僕と打ち合わせをしている時とで本当に何も変わらないので、ビックリしたんですよね。何もかも変わらないし、普段の会話がこんなに面白い人たちがいるんだって。
その後バーンと売れて、あまりにもスケジュールが取りづらくなって3年ほどで連載は終わってしまったんですけど、ずっと変わらなかったですね。

佐久間 バナナマンはずっとクレバーですよね。自分たちの中でこれが損か得かをちゃんとジャッジできる人たちだし。そういう意味でいうと、僕が仕事で出会ったおぎやはぎも劇団ひとりもバカリズムもあまり変わらないですね。東京03は1回失敗して、最後の思い出で組んだトリオなので、ブレながら何とかちょっとずつ自分たちの今のポジションを築いてきたという意味では変化していますけど、芸人さんはだいたい自分が自分のプロデューサーでもあるから、客観視点もみんな持っているんですよ。