『チェンソーマン』の地獄の描写には度肝を抜かれた(佐久間)
――『チェンソーマン』の場合、部数が動いたのはどの段階ですか?
林 実は最終巻付近なんです。それまではじわじわとまあまあいい部数という状況で、終わる直前ぐらいから急に風が一気に吹いてきて、バンといきました。「このマンガがすごい!」で1位を獲ったのもあって、より一層ファンが広がったという感じですね。
佐久間 「このタイミングで地獄に行くんだ!」というのはびっくりしましたね。『チェンソーマン』自体が、いわゆる漫画読みの想像するストーリーとは逸脱していたけど、それにしてもここで地獄行くんだって。地獄の描写にも本当に度肝を抜かれました。
林 地獄の描写は本人的にもけっこう大変だったと思います。藤本さんから、「林さん、地獄って何を思い浮かべます?」と聞かれて、たぶんそういうときって僕が言ったことを描かないつもりで聞いているんですけど、「一般的に思いつくのはこうだよね」とか「意外性を求めるならこうだよね」という話をしたのを覚えています。
佐久間 このときの『週刊少年ジャンプ』は恐ろしかったですよね。『鬼滅の刃』がクライマックスに向かっていて、『呪術廻戦』もあって、『チェンソーマン』ですから。どれも面白い!! みたいな感じでした。
林 その頃の『チェンソーマン』はアンケートのランキングが特別高いわけではなかったので、連載序盤は打ち切りにはならないかけっこうヒヤヒヤしていましたけどね(笑)。
――作家さんって、他の人気の作品というのはどこまで意識しているんですか?
林 口にするかどうかは置いておいて、たぶんみんな読んではいるんじゃないですかね。藤本さんはたぶん読まれていたと思います。でも、『SPY×FAMILY』の遠藤さんは『ジャンプ』の作品をそんなに読んでいるイメージはなくて、そういう話もしないです。だから、人によるのかな。
――作家さん同士、面識はあるんですか?
林 コロナ禍の前までは新年会があったので、そこで知り合ったりすることはありましたけど、今はそれがないので、機会は明らかに少なくなったと思います。僕も若手の作家の顔とか知らないですし。
そもそも自分の担当作家さんでめっちゃ打ち合わせしているのに顔を見たことない方とかもザラにいるので。
佐久間 そうなんですか!?
林 連載が決まったときに初めて会いに行くってことも当たり前なので、地方在住の作家さんは本当に会わないですね。まだ1回しか会ってない連載作家さんもいます。電話だけはめちゃくちゃしているから、べつに心の距離としては近いんですけど。
藤本さんも新人の頃は地方に住んでいたので、年に1回会うか会わないかでした。『ファイアパンチ』の連載のときに上京してきて、そのとき一緒に家探しを手伝って、「この街は映画館もあるし、おすすめです」みたいな感じでご紹介しました。