日本人はなぜ「人権」という言葉が苦手なのか_4
(藤田早苗 氏)

外国では人権をどのように学んでいるか

藤田 イギリスはじめ欧米では、私がヒューマンライツを専門にしているというと、その人の職業にかかわらず、大事なことですね、と言われるんですよ。ヒューマンライツってすべての根底にあるものだから。でも、日本にはその感覚がないんですよね。むしろ、胡散臭いやつ、みたいに思われることが多くて。

谷口 そう。日本ではヤバいやつになる(笑)。でも海外では逆で、以前、財務事務次官のセクハラ問題(2018年)が起きたとき、私は日本外国特派員協会で会見をしたんですよ。そこで、日本に必要なのは道徳教育ではなく人権教育だと発言したら、その発言が、海外メディアですごく取り上げられました。何で日本にはこんなに人権がないのか、外国メディアはわからなかったと思うんですが、そうか、道徳とごっちゃにされて教えられるから、こういうことになっているんだなと、文脈がつながったんです。

藤田 私はいろんな国の友達に、どうやってヒューマンライツを学んできたのか、よく聞くようにしています。たとえばカナダの友人は、自分に直接関係なくても、「どういう社会を望むか」という視点でものを見たり判断するように教えられてきたというんですね。たとえばバス代が上がることに対して、裕福な人もデモをするんですって。バスしか使えない人たちが困るじゃないかと。そういう価値観が根付いているんですね。

谷口 娘は、いまカナダに留学しているんですが、高校に社会正義の授業があると言っていました。対して日本はすぐに「自己責任」と言いますからね。日本の自己責任って、「施し」や「お恵み」と表裏一体だと思います。

藤田 やっぱり教育は大きいですよね。

谷口 それから最近では、「ビジネスと人権」という文脈が出てきましたよね。この本にも、国連人権機関が新たな問題として最近取り組んでいると書かれています。CSR(企業の社会的責任)とか、SDGs(持続可能な開発目標)などの観点から、企業も人権に配慮しなければいけないと考えられるようになったのは良いことですが、日本では儲かるか、儲からないか、の議論になりがちです。投資の対象から外れないために、人権をやります、みたいな。

藤田 そうそう。そうではなくて、持続可能な発展には人権の保障が不可欠なんですけど。

谷口 そうなんです。というのを、この本を読んで知ってもらいたいですね。ビジネスと人権のほか、ジェンダー、情報・表現の自由、入管施設で起きている問題など、これだけの情報がわかりやすくまとまっていて定価1000円は、だいぶお得やと思います。

藤田 「コスパええですよ」と宣伝してください(笑)。

谷口 私ら関西人には、お得っていうのが一番の売り言葉やからね。