語ることで気づく新たなラップの魅力

00年代に大阪のヒップホップシーンを大いに盛り上げ、現在も大阪シーンを牽引するクルー、韻踏合組合の作品を改めて読み直すことで得た、新たな発見も多かったようだ。

「自分で言うのも変ですけど、自分の(韻踏合組合に対する)解説を読めば読むほど、梅田サイファーと通じる部分や影響を感じましたね。大人数のグループやからこそ、その中に趣味嗜好や思想、バックボーン、ヒップホップやラップへの意識の違いに幅があって、それが集まったときに生まれる化学反応の面白さというのは、自分もユニットの中で感じてる刺激と、かなり近いんやろうな、と。

もっとリスナー的な目線で言えば、自分が衝撃を受けた韻踏合組合の『韻』や『ライミング』の凄さを伝えたかった。こんな韻の踏み方があるんや、こんな組み立て方が思いつくのかみたいな、韻の面白さを俺に叩き込んでくれたのが韻踏やったし、なぜ韻踏が、日本語ラップにおける韻の概念を一段階上に引き上げることが出来たのかを、自分なりに解説しています」

最終章ではNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのメンバーとして、そしてソロとして、「東京のヒップホップ」「渋谷のヒップホップ」をシーンに知らしめたDABOが取り上げられる。

「ヒップホップヘッズなら、DABOさんの『ラップの巧さ』に誰しもが衝撃をうけてると思うんですよね。そのDABOさんのラップについて、どんな要素がそんなにラップを格好良く、巧く聴かせる秘訣になっているのか、そしてDABOさんならではの“粋”な語り口について、俺なりに読解してます。

ホンマにDABOさんのラップはしがんでもしがんでも、いくらでも味が出てくる。梅田サイファーの仲間とDABOさんの凄さを夜中の0時に話し出して、気がついたら次の日の昼過ぎになってたときがありますからね(笑)。だから今回の単行本の中でも、DABOさんの1stアルバム『Platinum Tongue』すら全曲解説できなかったほど、一曲一曲の解説に時間をかけてるんですけど、その熱量も感じ取って貰えればと思いますね」

巻末には単行本の特別企画として、ラッパーのCHICO CARLITOとR-指定による対談を収録。そこではラッパー同士ならでは、そして同世代ならではのサブジェクトが話し合われているが、大阪出身のR-指定と、沖縄出身のCHICO CARLITOの考える方言論や、それがラップに及ぼす影響への分析も非常に興味深い。

サザンの曲で言えば『ミス・ブランニュー・デイ』、サイクルの早い文化であり消費される音楽…だからこそ、R-指定が考える「日本語ラップ」の蓄積とこれから_2
R-指定&CHICO CARLITO

「俺も自分の曲の中で関西弁を使うし、インタビューでも無理に標準語を喋ったりはしないんですよ。テキストで直されることはありますけど、まあそれは、しゃーないかなと(笑)。

でも『アンサンブルプレイ』に収録した『フロント9番』のような内容は、関西弁じゃないとニュアンスが伝わらないと思うんですよね。そういった方言が生み出すニュアンスや、言葉自体のグルーヴについても、沖縄出身のCHICO CARLITOと話すことができたのは楽しかったですね」