くらもち先生のコメントも多数収録

――「コロナ禍もあったので、どうしても原画展においでになれない方もいるだろうから、画集は先生と一緒に歩いて見て回っているような構成にしたい」という担当さんの想いから、できるだけ時系列で、作品と同じページに先生のコメントも掲載する、という方法をとったそうです。

名久井 作品もコメントも頑張って収めましたよ。制作スタッフの間で「キッチリオサメール」と呼ばれながら(笑)。

「50周年記念画集に込められた、スタッフの想い」くらもちふさこ×名久井直子スペシャル対談(中)〜デビュー50周年記念画集『THEくらもちふさこ』こだわりのすべて その3_f
キャプション(出典)とくらもち先生のコメントKURAVOICEを同一ページ内に置きつつ絵の邪魔をしないよう配置するのが「キッチリオサメール」。手間がかかるので、ふつう画集ではあまりやらない(撮影:ハナダミチコ)

名久井 私はここも気に入っています。絵が欠けるから普通画集ではやらないんですけど、先生はいいよと言ってくれる気がして。
くらもち いいます(きっぱり)。

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『THEくらもちふさこ』33p。角版イラストの背景に、ちょっとだけ別イラストが乗っている。キッチリオサメつつ、微妙な破調が好リズムに(撮影:細川葉子)

くらもち 私は、その神社でお参りするページが、原稿よりも統一感があって好きなページです。

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『THEくらもちふさこ』36p。『いろはにこんぺいと』の淡いカラー本文を雑誌の時と同じサイズで収録している(撮影:細川葉子)

名久井 その感覚は先生しかわからないものですよ(笑)。私はできるだけ原画に近づけようと頑張るしかないですから。

くらもち 「このページ、こんな風になったんだ!」って、うれしくって飛びあがっちゃったもの。

名久井 印刷すると、原画の強いところが物理的に少し弱まって、やわらかくなるせいですかね?

くらもち そういうことか〜。でも改めてこうして画集をみると、名久井さんが随分こまかく見てくださったんでしょう。

名久井 夜中にみんなでずいぶん色校正をしましたね。

――1晩で赤ボールペン1本使いきってらっしゃいました。

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実際の校正紙。原画と突き合わせながら、細かく赤字を入れる。

名久井 そう! インクが切れちゃって(笑)。何度も校正取らせてもらい、最後の最後は沼津の図書印刷さんの工場まで行きました。図書印刷さんも最後まで対応してくださって。…ギリギリだったんですよね。翌週はもう〈まん延防止〉で工場に入れなかったんで。

くらもち みなさん、そんなに……。泣きそうです。

名久井 工場に行っちゃうと、もう版は変えられないですけど、インキの強さを変えられるんです。用紙の部分部分で強さを変えられるので、最後に少し調整するとだいぶきれいになります。

くらもち そんなことができるんだ! いろいろなことを経験されているから、こんなに綺麗な色にできるんですね。


――名久井さんが色校正で大事にしていることは何でしょうか?

名久井 印象が近いことですね。本当は全点まんべんなく原画と近づけたいけど、それはできないから、見た目の雰囲気や感覚を大事にしています。

くらもち 感覚って大事ですよね。

――少女漫画誌は昔から墨版を入れない3色+蛍光ピンクで分解してきたので「原画のままにはならない」という大前提があります。

名久井 今回は墨も入っていますから、連載当時の記憶がある人からすると全体的にカリッとして見えているかもしれないです。そういえば、2色印刷もなくなりましたね。

――今ではコスト的に4色印刷と変わらなくなったのと、描き手の手間も4色と変わらないのだそうです。

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『別冊マーガレット』1985年3月号。2色印刷の予告がオシャレ(撮影:細川葉子)

くらもち わー、このページなつかしい。これは当時の別マ自慢の緑の2色ですね(笑)。この色がとても特別な色だと編集さんに言われた記憶があります。私自身は2色ページ好きだったんですよ。