<コモン>の管理から始める民主主義

斎藤 それを私の言葉でいえば、神宮外苑は市民の共有財産<コモン>です。<コモン>をどうしたいのか、みんなの声を聴くべきだし、聞いてくれないなら、声をあげて抵抗するしかない。

『人新世の「資本論」』でも書いたことですが、これ以上の気候変動を防ぐためには、環境という<コモン>を市民みんなの手で大事にし、その管理をどうすべきかをみんなで考えなくてはなりません。この神宮外苑の再開発がその典型であるように、行政や資本に任せっきりでは、環境危機は止まらないのです。今回の事業者である企業も、やたらにSDGsを掲げて、環境に配慮するふりをしていますが、その片手で神宮外苑の緑を壊し、環境負荷の高い再開発をやりたがっている。

だから、その意味でも、ロッシェルさんたち市民の活動に注目をしているのです。先ほどお話をいただいた再開発の計画を知ったら、東京都など行政に任せているだけでは、とんでもないことになるんだというのがわかると思うんですよね。だから、街という<コモン>については、市民が積極的に参加をして、市民の声が反映されるようにしていかなきゃいけない。

ロッシェル 理想をいえば、ほかの先進国のようにアセスメントの制度をきちんと作ってほしいです。

斎藤 ただ、日本の制度はうんと遅れたところにいる。

ロッシェル 時間がないこの外苑再開発問題に関しては、まずは、署名運動に参加してくださることが第一歩です。そして、さらにアクションを起こしたい人が集まるワーキング・グループを複数作り、フェイスブックで誰でも参加できるように整えました。

チラシを作って配布する、議員に働きかけるグループ、神宮外苑のすばらしさを伝える美術展を企画するなど、テーマはいろいろですが、各グループが自律的に活動し始めました。

斎藤 個人個人が自主的に自分のできることをやりつつ、ゆるやかにつながるというモデルは素晴らしいですね。民主主義の実現を誰かが上のほうでやってくれるのを待っていても仕方ない。私たちが<コモン>を守るために行動しないといけないわけです。その際、ロッシェルさんたちがやろうとしている自律分散型の組織には未来を感じます。

ロッシェル こうした方法論が、日本各地に広まっていくことを願っています。