2 日本人スターキャストの気合の入った演技

ジェイクと組んで危険なネタに踏み込む敏腕刑事の片桐を演じたのは渡辺謙。本作ではエグゼクティブ・プロデューサーも務め、脚本家から上がってきた台本を日本語に翻訳する段階で、新聞記者、ヤクザ、刑事など、それぞれのキャラクターにあった言葉になるようチェックも行っていたとか。
「世界的に悲惨なことも多く、バイオレンスを描くということが難しい時代。人間の持つ過酷さ、辛さ、幸せが詰まった作品です。それぞれのキャラクターの裏にあるものを受け止めてほしいです」と渡辺は語る。

オール日本ロケで制作された日米共同制作ドラマ『TOKYO VICE』を見るべき3つの理由_d

裏社会と繋がりのある刑事の宮本を演じたのは伊藤英明。もともとマイケル・マンの大ファンで、『コラテラル』(04)のメイキングは何十回も見ていたほど。3年前に監督と2人きりで行ったオーディションでは緊張しすぎて、「ビデオテープを送ってくれたときのエネルギッシュな英明はどこに行った?」と指摘されてしまったそう。
「どうしたらいいパフォーマンスができるのか? と監督に聞いたときに“完璧に全てを演じようとするとうまくいかない。ドアから入ってきて出ていくまでにひとつでも輝きを見せられればいいんだ”と言っていただいてオーディションを終えました。最後に“本当にその役をやりたいか?”と問われて“僕に決めていただけたら最高のパフォーマンスを見せられる!”と返したら“See you on the set”と。役をもらえたと確信しました。あのとき言われた言葉は宝物になっています」 

オール日本ロケで制作された日米共同制作ドラマ『TOKYO VICE』を見るべき3つの理由_e

謎めいたカリスマホストのアキラを演じたのは山下智久。本人は「クソホスト役(笑)」と自嘲するが、アイドルとしてスポットライトを浴びてきた山下が、陰のあるキャラクターをいかに体現するかが見どころだ。
「いい作品を作るぞという情熱みたいなものは世界共通なんだなと改めて感じることができました。監督からのアドバイスを受けて役を作っていく過程で、自分は完璧じゃなくてもいいんだなと。カッコよくなくてもミスがあっても、ありのままの自分でいることを認めていただけた気がして。(渡辺)謙さんとは 25 年ぶり、(伊藤)英明さんとは 10 年ぶりくらいに共演させていただいて。こうやって先輩と同じ現場に戻ってくることができてうれしかったです」

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そしてヤクザの若きリーダー、佐藤を演じたのが笠松将。ジェイクと意気投合するものの敵か味方かわからない人物を、佇まいだけでセクシーに演じている。
「自分が持っているコンプレックスや将来への不安、ネガティブなマインドを全部マイケル・マンら監督陣が取り除いてくれて、僕はお芝居だけに集中することができたし、英語の壁といったストレスを全部解消してくれました。エキサイティングで学ぶことも多かった現場でした」

役を得るためのオーディションは、その役を演じるに値するスキルがあるか、役のイメージとフィットするかをシビアにジャッジされる厳しい場所。華々しいキャリアを誇る彼らがそんなオーディションを経て勝ち取った役への情熱を、画面を通して感じてほしい。