ユニバーサルデザイン志向が、結果として海外にも届くことにつながった
ところで、Kazé France社が「絶対ヒットする」と思った「作品の質」とは具体的にはどんな部分を指すのか。
「この作品はハリウッド映画のブロックバスター作品に通じるところがある。ユーモア、アクション、そしてオリジナリティに富んでいて、人物描写がすばらしい」(ヴァルス編集長)
「『ジャンプ』にはアクションやラブコメなど様々なジャンルの作品があり、読者層は多様です。しかし『怪獣8号』については年齢や男女を問わず、フランスのマンガ読者のすべてのカテゴリーの人が読んでいます」(マンソー部長)
そして、『怪獣8号』は元々こういう反応を狙って作られていた。
「『怪獣8号』の世界に登場する日本防衛隊が身に付けるスーツは各々の適性を引き出すもので、性別や年齢的な強者がそのままの強さになるものではありません。誰もがその人の持つ能力で活躍できる世界観を描いています。
それ以外にも、老若男女問わず多様な読者層に受け入れられるようなユニバーサルデザインを志向してきました。“少年マンガ”ではあるけれども、少年だけに向けているのではなく、あらゆる読者層が楽しめるエンタメを作るという意識でいます。
それから『怪獣8号』はSFと評されることが多いんですが、僕や松本先生はSFとは思っていません。SF作品であれば求められる、読者が理解しないといけない設定というハードルをなるべく減らしているんです。『僕らが生きている日常に怪獣がいたら』と想像するだけで入っていける、間口の広さを意識しています。そういうことが結果として海外でも通用する表現につながったのかな、と思います」(「少年ジャンプ+」編集部・中路副編集長)
とはいえ中路副編集長は、32歳の青年カフカを主人公とする「夢破れた大人の話」に対してここまでの反響があるとは、連載が始まる以前には想像していなかったという。