見方を変える、発想を転換する

「“突っ込む”っていう表現が、たぶんダメなんじゃないのかなと思っているんです。速いペースで入るのがスタンダードなんだという発想にしないといけない。学生にも言っているんですけどね。想定外だと思ってしまうから、アドレナリンが出て、『やばい、やばい』って慌ててしまうんですよね」

こんなハッとするような言葉を発したのは、東洋大の酒井俊幸監督だった。

2022年11月中旬にあるイベントに参加したときのことだ。

ゲストで来ていた酒井監督に「駅伝で突っ込むためには、どんな練習をすればいいんですか?」と質問を投げかけたところ、こんな答えをくれたのだった。

【箱根駅伝】東洋大はエース不在の大ピンチを乗り越えられるか。酒井俊幸監督「私も選手も『自分たちだけでやるんだ』という覚悟はできている」_1
インタビューに応じる酒井俊幸監督
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昨今の駅伝では、見ているこちら側が「オーバーペースなのでは?」と心配になるほど、いきなりアクセルを全開にする選手が多い印象があったので、思い立った質問だった。だが話は思いがけない方向に進んだ。

「例えば、追い風だったら(1㎞)2分40秒とか2分45秒とかのハイペースで、速い動きで(脚を)回していったほうがいいんですよ。

解説の方が『攻めますね』って言ったりしますけど、実はあのスピードのほうが楽に走れるんです。逆に、スローペースで抑えて入っちゃうと、安全策のつもりが、普段は使わない『ブレーキ筋』を使ってしまうことになり、走りにくくなる。
特に、厚底シューズを履いたときに遅く走ると、速く走るための型から外れてしまうんですね」

筆者の勉強不足もあるが、目から鱗が落ちる思いだった。