常に進化しないと勝てない

とにもかくにも、酒井監督には話をうかがうたびに驚かされる。それまでの常識を疑うかのごとく、常に情報がアップデートされているのだ。

さらに一例を挙げると、東洋大では2021年度から血糖値の変化をモニタリングし、そのデータを栄養管理やトレーニングに活用している。だからこそ、冒頭の「想定外だと思ってしまうから、アドレナリンが出て……」という酒井監督の言葉にも、妙に説得力があった。

シューズに関しても「厚底シューズ」と一括りにしてしまいがちだが、その性能や特徴を理解した上で履き分けを推奨している。

東洋大の選手の場合、ナイキの「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」もしくは「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」をレースに履く選手が多いが、目的やコースに応じて選手はシューズを選択している。

また、シューズの性能をより活かすために、フィジカルトレーニングにも取り組んでいる。

「監督に就任したばかりの頃は、何も知らないので、勢いでやっていましたけど……。新しいことを取り入れて、気づきがあったほうが面白いですよね。

それに、今や学生のトップレベルの選手は実業団と遜色ないですし、他の大学の指導者もアップデートしている中で、常に進化していかないと日本代表を取れないし、インカレにも勝てない。

私は高校の教員から大学の指導者になりましたが、高校の練習のままでは100%太刀打ちできないじゃないですか。なので、常々、アップデートは必要かなと思っています」

酒井監督が東洋大の指揮をとるようになって14年目のシーズンを迎えたが、今なお、学ぶ姿勢を崩さない。チームとともに進化の途上にある。

【箱根駅伝】東洋大はエース不在の大ピンチを乗り越えられるか。酒井俊幸監督「私も選手も『自分たちだけでやるんだ』という覚悟はできている」_2