では職場のメンバーと仲よくなるのはどうしたらいいのでしょうか。組織社会化の研究では、新人の適応を促すために2つのアプローチが示されています。「組織社会化戦術」と 「プロアクティブ行動」です。

組織社会化戦術は、会社から新人に対する働きかけを指します。新人研修は組織社会化戦術の一例です。一般に新卒採用では、組織社会化戦術が十分に取られますが、中途採用では手薄になりがちです。

組織社会化戦術には、意図的で体系的な「制度的戦術」と、意図はなく自然に接する「個別的戦術」があります。このうち、新人の適応につながりやすいのは制度的戦術のほうです。

新人の適応に有効な制度的戦術は、次の4つです。新人のマネージメントの場で、まだ実行していない戦術があれば取り入れてみてはどうでしょうか?

1.規則的戦術:「最初の研修はこれで次はこれ、その後は現場に出て…」と、適応すべき内容を順序立てて明確に示す。

2.固定的戦術:適応に向けたタイムテーブルを定め、やるべきことに徐々に慣れてもらう。

3.連続的戦術:新人にロールモデルやメンターをつけ、継続してフォローする。

4.付与的戦術:「この点がよかったね」など、肯定的なフィードバックを新人に提供し、会社での役割を遂行できるという自信を高める。

職場で新人が自ら働きかけることも大切

「言うことを聞く新人」より「勝手に動く新人」のほうが早く戦力になる理由_b

組織社会化の研究では、近年まで、新人が受動的な存在として捉えられてきました。しかし新人は会社から影響を受けるだけではありません。新人もまた会社に対して影響を与えます。

新人が自らの適応のために積極的に振る舞う、「プロアクティブ行動」に注目が集まっています。プロアクティブ行動とは、新人による、自分や環境に影響を与える未来志向で変革志向の行動を指します。

新人のプロアクティブ行動が適応にポジティブに作用するのは、「自分を取り巻く環境を理解するには、自分で動いたほうが早い」からです。新しい会社に入ると、どうにもならないことの多さに悩むものです。

けれども、プロアクティブ行動を取れば、少しずつコントロールできることが増えていきます。新人によるプロアクティブ行動の例を7つ挙げましょう。

1.自ら情報を探しにいく
2.自分の仕事ぶりに対するフィードバックを求める
3.上司と良好な関係を築く
4.社内での人脈作りに励む
5.オフィスに立ち寄るなど、親睦を深めようとする
6.自分の仕事を変えてもらうように交渉する
7.物事をポジティブに解釈する

会社やチーム側から制度的戦術で新人にアプローチし、新人自らのプロアクティブ行動を承認していけば、早期の戦力化が可能になりそうです。ぜひ参考にしてみてください。

※本記事は『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』内の「14  新人を早期戦力化したい」を元に作成しています。実際には多くの文献や研究結果を元に記載されておりますが、その注釈は省略させていただきます。

『現場でよくある課題への処方箋  人と組織の行動科学 』
(伊達洋駆著・すばる社)
「言うことを聞く新人」より「勝手に動く新人」のほうが早く戦力になる理由_c
2022/2/24
¥3,540
単行本 ‏ : ‎ 352ページ
ISBN:4799110004
人や組織をめぐる44項目の課題を取り上げ、会社における人の心理や行動を探求する「組織行動論」の研究知見をもとに、対策を解説。実務に有益なエビデンスがひととおり揃う一冊。
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