サイ・ヤング賞獲得の条件は「中4日」

大谷翔平はMLBで104年ぶりとなる二桁勝利、二桁本塁打をなぜ、達成できたのか? エンゼルス番記者が語る舞台裏_2
メジャー取材歴24年で、米野球殿堂入りを決める投票資格も持つジェフ・フレッチャー氏。2013年よりエンゼルスを担当し、大谷の取材に関してはMLBルーキーイヤーから4年間にわたって密着取材
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――さて今シーズン、前年の大活躍もあり期待度は高かったと思うのですが、フレッチャーさんとしては、なにか懸念材料はありましたか。

大谷本人はまた同じような成績を残せると自信満々な様子でしたが、メジャーの歴史上、2021年のような投打ともに活躍をした選手は誰もいないわけです。それを2年連続でやるというのは、正直あり得ないと思っていました。しかし大谷はこの予想を見事に裏切ってくれたんです。

――とくにピッチングに関しては15勝9敗、防御率2.33と前年を大きく上回りました。

明らかなのは、まずコントロールがよくなったことです。2021年の大谷は、100マイル(約160キロ)を超えるストレートを投げてはいたものの、コントロールが悪くフォアボールを与え、また被弾することも少なからずありました。

しかし今季はフォアボールが減り、ピッチャーとしての成長を感じました。あとはスライダーの質が向上し、有効なボールになっていましたね。

――変化球と言えば8月のマリナーズ戦からツーシーム(シンカー)を投げるようになりました。

ツーシームを投げた数自体はそれほど多くなかったと思うのですが、要所要所で非常に効果的だったと思います。そもそもシーズン中に新しい球種を加えピッチングをすること自体、信じられないことです。

また大谷はストレートと腕の振りが変わらず変化球を投げられるので、左右対になるツーシームとスライダーの存在は、バッターから見ればやっかいだったと思いますね。

――また顕著だったのがスコアリングポジションにランナーを置いた状態での被打率が低かったことです。

まさにおっしゃる通りですね。得点圏での被打率は昨年も低い数字でしたが、ピンチの場面での強さは、彼がメジャーに来てから伸びた部分だと思います。

一番大事なときのために力を貯めておくというか、試合全体を見てピッチングをマネジメントできる能力は、彼に新しく備わってきた部分だと思いますね。いずれにせよ投球に関しては、今年のほうが去年よりも圧倒的に良かったです。

――例えば今後、ピッチャーとして最高の栄誉であるサイ・ヤング賞を大谷選手が受賞するにためには、なにが必要になりますか。

まずは投球回数を増やすことですね。今年は中5日で登板していましたが、これを中4日で続けることができれば、確実にサイ・ヤング賞に近づくと思います。