大谷翔平はMLBで104年ぶりとなる二桁勝利、二桁本塁打をなぜ、達成できたのか? エンゼルス番記者が語る舞台裏を読む
ジャッジがMVPを獲得できた理由
――今季の大谷選手は、MLBでじつに104年ぶりとなる二桁勝利、二桁本塁打。しかも規定投球回数と規定打席をクリアしての偉業を成し遂げました。
もう本当、言葉がありません。そもそもひとりの選手が1シーズンで、投手として1勝、打者として1本塁打だけで、もはや偉業なんです。あとの数字は全部おまけみたいなものですよ。
――ご自身がジャーナリストとして活動している間、大谷選手のようなプレイヤーに遭遇できると考えていましたか。
いや、そんなわけないですよね(笑)。よくベーブ・ルース以来と取り沙汰されますが、ベーブ・ルース本人は二刀流をやりたかったわけではありませんでしたし、ましてや1シーズン通してやりきったことはないんです。当時とは野球のレベルがまったく違う現代において、私は大谷のほうがベーブ・ルースよりもはるかに偉大だと思っていますよ。
――今シーズンはヤンキースのアーロン・ジャッジとのMVP争いが議論の的になりましたが、フレッチャーさんはどのような見解をもっていますか。
もし私に投票権があったら迷わず大谷に入れていました。今季も誰も成し遂げたことのない数字を残したわけですからね。しかし、ジャッジの62本塁打もロジャー・マリスを超える大記録なわけです。
ひとつ大事なことはジャッジが所属するヤンキースはプレーオフに進出したチームであり、一方でエンゼルスはプレーオフには進めなかったチーム。私個人としてはそこにあまり価値を感じませんが、大部分の人は強いチームに重きを置いている。ゆえにジャッジのMVPだったと思います。
――大谷選手は10月にエンゼルスと1年契約を結びました。本人も「愛着のあるこのチームで勝ちたい」と語っていましたね。
10月に来季の契約を結んだのは、私たちとしては驚きでした。たいがいこの手の契約は年が明けた1月ぐらいにまとまるものです。エンゼルスに残ること自体に関して驚きはありませんが、とにかく決まるのが早かった。
まあ、互いに心配の種を早めに消しておきたいという狙いもあったでしょうし、大谷自身、去就が確定することでオフのトレーニングに集中できますからね。エンゼルスとしても、これで腰を据えて他の選手の獲得に動けるということで、両者にとって利害が一致したということなのでしょう。
――なるほど。実際エンゼルスは今オフ、積極的な補強をしていますね。
いい方向に行っているのは間違いないと思います。エンゼルスの課題は打撃ですが、すでにツインズから内野手のジオ・ウルシェラとブルワーズから外野手のハンター・レンフローをトレードで獲得しています。
また今季ドジャースで15勝を挙げた左腕のタイラー・アンダーソンが加入しますから、来季は期待できると思います。あとは中軸のアンソニー・レンドンがシーズンを通してプレーをしてくれれば、といったところですね。