尖った施設が、街に馴染むまでの20年

今から20年前“労働者の街”に突如、イタリア街が出現。川崎はいかにして“カルチャーの街”になったのか_5

そのラ チッタデッラのオープンから20年。JR川崎駅西口には109シネマズ川崎の入るショッピングモール・ラゾーナ川崎が、京急川崎駅前にはTOHOシネマズ川崎もあり、東京の新宿や銀座に匹敵する一大映画館街となった。

チネチッタは、クラブチッタのスタッフが音響監修した「LIVE ZOUND」が実写映画のみならず多くのアニメ作品で好評で、“アニメ映画の聖地”と称される。チネチッタのスタッフで構成される「手芸部」が手がけた、こだわりすぎるキャラクター衣装の展示も話題となっている。

「たかが20年ですが、時代も変わり、“尖っている”と言われたラ チッタデッラも街に馴染み始めているように思います。テナントも当初は“神奈川初出店”が多く、遠方からたくさんのお客さんが来てくださいましたが、実際にリピートして訪れてくれるのは半径5kmの住民のみなさん。これからも尖った部分は残しつつ、地域に合った施設であり続けたいと思います」(土岐さん)。

川崎は工場夜景が観光名所であるとともに、プロバスケットボールチームの川崎ブレイブサンダースや、日本代表選手を多数輩出しているサッカー・川崎フロンターレのホームタウンとして街のブランド力も上昇中。

さらに市が進める都市開発プロジェクト「キングスカイフロント」は、国際的先端研究開発の拠点となっている。

今から20年前“労働者の街”に突如、イタリア街が出現。川崎はいかにして“カルチャーの街”になったのか_7
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「川崎には都心にも、横浜にもない魅力があり、川崎ならではの観光資源も豊富です。これからも我々が川崎のエンタメ界を牽引して行けたら」(土岐さん)。

今、ラ チッタデッラのガラスのタワーには次の文字が書かれている。

「チッタ、たった、100年」

何をやらかしてくれるのか……。これからも目が離せそうにない。


文/中山治美