なぜ年末に高齢者の自殺が多いのか?
日本では自治体やNPOが高齢者支援と称して様々な取り組みを行っている。高齢者が一人で思い悩んだり、ストレスをため込んだりしないようにするため、大勢の人たちで集まる機会を設けているのだ。
だが、実際に支援の現場に足を運んでみると、そこに集まる人たちは適度に満たされた高齢者ばかりということが少なくない。わざわざ自分からそこに来られるのは、それなりに生活が充実していて、自分に自信があって、社交性のある人たちが大半だ。逆に本当の意味で孤立して、苦しみを抱えている人たちは、なかなか自分からアプローチしようとしない。
ある生活保護を受けていた独居老人は次のように語っていた。
「ああいうところに来るのは、一人でもやっていける元気な人たちばかりなんです。あの人たちは自分の自慢しかしない。そんな人たちと一緒にいたら、余計に自分がみじめになりますよ」
本当に支援を必要とする人たちが、支援にアプローチできないという現実があるのだ。こうしたことを踏まえると、年末に高齢者の自殺が多い理由が明らかになってくる。
孤立して一人で生きている高齢者は、そもそも社会との接点が希薄だ。そのため、社会のサイクルとはあまり関係なく生きているので、夏や週明けに自殺リスクが高まるということはあまりない。
では、どういう時に、彼らの孤独が強まり、自殺への引き金になるのか。それがイベントごとなのである。
クリスマスには町全体が華やぐし、正月に流れるテレビ番組は家族団欒を前提にしてつくられている。そのため、高齢者は普段以上に孤独を感じる傾向にあるのだ。
――世間がこんなに楽しそうに盛り上がっているのに、自分だけが一人取り残されている。
そんなふうに考えるのである。それゆえ、高齢者はこうした時期に自殺をする傾向がある。