往年のヒットコンテンツが地上波からBSへ

たとえば時代劇。BS各チャンネルでは再放送ながら毎日のように時代劇が放送されている。とくに17時〜19時は時代劇がBS民放でかぶったりするくらい活況だ。
中でもBSフジは時代劇が柱の一つになっており、CSの時代劇専門チャンネルとタッグを組んで新作時代劇の制作にも取り組んでいたりする。
新規開設局のBS松竹東急でも(かなり変化球だが)江戸時代の侍のもとに最新家電が届く『家電侍』が滝藤賢一主演で始まった。

時代劇ファンの皆さんは『暴れん坊将軍』を見るために朝4時に起きる必要はないのだ。BSではまだ時代劇は生きているのだから。

そして、映画も週10本ペースで放送されている。しかも時間帯も19時や21時などで、良い時間帯だ。
放送されるのも、超メジャー作とも言い難く、最新作とも言い難い、でも見飽きた感じでもない佳作といった絶妙なラインをついてくる作品が多い。

いじってんのかこの野郎と感じられた人もいるかもしれないが、全くそんなことはない。
各種配信サービスでいつでも好きな映画が見られる現代。一人あたりの可処分時間が有限な中、みんなハズレのない大作か、口コミで聞いた良作にしか辿り着かなくなっている。
無料かつ放送時間の決まったBS民放で放送するならそんな超有名作では意味がない、かと言ってマニアック過ぎるのも困る。BSはこのラインナップでいいのだ。

さらに、近年見られる動きとして、地上波で終わった番組がBSに引っ越したり、BSで復活したりするケースが挙げられる。記憶に新しいところではTBSの『噂の!東京マガジン』がそうだ。

近時、一部民放局は地上波では「コア視聴率重視」の方針を打ち出し、ご年配層向けの番組がいくつか終了した。その流れで『噂の!東京マガジン』も当初は「終了」と憶測記事が出たが、結果的にBS-TBSで元の地上波と同じ時間に放送されている。内容も変わらずレギュラー陣も全員残留だ。

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そして最近の大ニュースといえば『パネルクイズ アタック25 Next』のBSでの復活である。
『アタック25』といえば1975年から約46年間放送され、2021年9月に惜しまれつつ終了した視聴者参加型クイズ番組の草分け。それがBS Japanextの開局に合わせ、谷原章介の司会もそのままに復活したのだ。復活初回の3月27日はなんとBS Japanext開局特番で生放送。収録ならカットされているであろう出題を噛んでしまう沢木美佳子アナや、参加者が間違って変なタイミングで早押しボタンを押すところなど、貴重な場面が見られた。

BS局が増えたこともあり、おそらくこの手の往年の地上波番組がBSで復活というケースは増えていくことだろう。

「ニュースもBS」という選択肢

最後にもう一つ真面目な話を付け加えたい(いやここまでも真面目に書いてはいるのだが)。
ロシアのウクライナに対する軍事侵攻のニュースが発生して以後、BSのニュース番組が注目されるようになった。

比較的編成に余裕があるためか、BSは民放局であっても地上波以上に一つのテーマを深掘りするニュース番組が多い。これらの番組では、ワイドショーなどで見るようなコメンテーターは出演しておらず、専門家が丁寧にしっかり時間をとって解説してくれる。

今回のロシア軍のウクライナへの侵攻のように、背景が分かりづらい一方、我々の生活にも大いに関係するような事態が発生したことで、BSニュースの特徴が見直される機会になったと思う。

「地上波テレビも見なくなったのに、BSなんかもっと見ないよ」。そういう人もいるかもしれない。しかしそれは食わず嫌いというもの。BSには古き良き地上波テレビ文化もあれば、深層をえぐる報道姿勢もある。今回あまり触れられなかったもののマニアックな特色ある番組も数多い。

もう一度、BS見てみましょうよ。新たな発見があるかもしれませんよ。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太