ドイツ人が重要視する“デュエルと闘志”

――現在、キッカー誌(ドイツ国内売上1位のサッカー専門紙)の平均評価点ランキングで鎌田選手が単独トップに位置していますが、その凄さを説明してもらえますか?

キッカー誌の採点では1が最高評価で6が最低評価なのですが、現在の鎌田の平均評価点は2.55です。
これまでに年間を通してランキングトップに立った日本人として、2010-2011シーズンの香川真司がいます。その年の香川の最終的な数字が2.62なので、もし鎌田がこのままのペースでプレーできれば、ドイツサッカー史でも稀に見るような評価の高さでシーズンを終えるかもしれません。

強豪ドイツ代表と現在リーグ1位のバイエルン・ミュンヘンの中心選手であるヨシュア・キミッヒやレロイ・サネ、ジャマル・ムシアラ、という錚々たる面々を抑えて平均評価点トップに立っているわけなので、それは凄いことです。もしドイツ人であればドイツ代表に選ばれるレベルでしょう。

今シーズンは、得点とアシストという結果だけではなく、スライディングや競り合いなどの体を張った守備が増えているのも、評価を高めている要因だと思います。
ドイツ人は、サッカーで一番大事なのはデュエル(球際での一対一の競り合い)だとよく口にします。たとえば試合翌日のスポーツ紙には、各選手のシュート数やゴール数などが書かれているのですが、必ずそこにデュエルの勝利数も載るくらい、“球際の攻防”がドイツでは重要視されているのです。

あとはドイツ語でKörperspracheという、直訳するとボディランゲージを意味する単語があります。それを上手く体現できている選手は、必然的に評価が上がります。
日本のサッカー文化では、上手くて華麗な選手が評価されやすいと思うのですが、一方でドイツでは「感情を表に出して闘う」ことをより重要視するのです。

これまでの鎌田は、そういった泥臭い部分はどちらかというと苦手だと思われていましたが、今シーズンはそれすらも改善し、ドイツ人をより納得させられるようになってきたのでしょう。

【日本代表の支柱】ドイツサッカー史上、最高の評価受ける日本人選手・鎌田大地の知られざる「雑草時代」_2
第15節終了時点のキッカー誌最新ランキングを元に作成。現在1位を走るバイエルン・ミュンヘンの選手が多数を占める中、鎌田大地がトップに君臨している

――フランクフルトと鎌田との契約が今シーズン限りということもあり、様々なクラブが獲得に関心を示していると報道されています。フランクフルト側は契約延長と移籍のどちらを望んでいるのでしょうか?

ドイツ国内の報道によると、フランクフルト側としては、鎌田と契約延長したいと考えているそうです。

フランクフルトの選手の給与体系を上から順に大まかに挙げると、「ワールドクラスのスター」、「主力」、「準レギュラー」、という3つの枠組みに分かれています。鎌田は、現在「主力」と「準レギュラー」の中間くらいの給与を得ています。

一番上の枠には、カタールW杯のドイツ代表にも選ばれたマリオ・ゲッツェとGKのケヴィン・トラップという、クラブが特別視している2選手しかおらず、彼らの年俸は約5億5千万円とされています。クラブ側は鎌田に、その一番上の枠に値する年俸で契約を結び直し、できるだけ長くチームに留まって欲しい、と考えているようです。

ただ、鎌田自身がどう考えているかはまだわかりません。
具体的なプランは聞いていませんが、彼の目標は「チャンピオンズリーグで優勝すること」だと、昔からずっと変わらずに言っています。フランクフルトはもちろんいいチームですが、チャンピオンズリーグ優勝というのはあまり現実的ではありません。

もしもこの先、チャンピオンズリーグ優勝を狙えるチームからのオファーがあれば、移籍を選ぶのではないかなと思いますね。