アテネ五輪最終予選で起きた「事件」
――2015年の現役引退と同時にスタートアップ「AuB(オーブ)」を設立し、トップアスリートの腸内環境を研究。現在は栄養補助食品などを販売されていますが、なぜアスリートのうんちに注目されたのでしょうか。
母が調理師だったのですが、僕が子どものころから「健康の土台は腸」「ウンチをよく見なさい」と繰り返し言われていた影響が大きいです。当時はマジメに受け止めていなかったのですが、それでも母はずっと言い続けるんですよ。
それで、ウンチの状態で体調を把握するのが習慣になりました。今では自分のウンチを観察しない人に対して「なんでしないんですか?」と聞きたいくらいです(笑)。
――ウンチを見る上でポイントはあるんですか?
やはり途中で切れてしまうよりも、1本で出た方が気分がいいですよね。僕の場合はバナナみたいなウンチがでると今日も体調がいいなと感じます。逆に体調が悪いと便の状態も悪くなりますよね。
――例えばお酒を飲み過ぎた翌日は、便がゆるくなったりしますよね。
そうなったら、酒量を減らしたり、数日控えたりすれば体調は回復します。つまり体調が悪くなった理由もウンチが教えてくれるわけです。そうやって幼い頃から便や腸の状態を意識してきました。高校時代には腸内細菌が入ったサプリを飲むようになったり、お腹を温めたりするようになっていました。
ただし、僕の高校時代は、25年近く前。当時は腸の状態とサッカーのパフォーマンスがどのように結びつくのかを、きちんと説明できる人もいなかった。
半信半疑で、母に言われてサプリを飲んでいたんですが、チームメイトに「なに飲んでるの?」と聞かれても、「ビタミン」と答えてました。腸内細菌のサプリを飲んでいるなんて知られたら、おかしなヤツだと思われる時代でしたから。
――現役時代、ご自身の便を観察する習慣が強みになった経験はありますか?
2004年にUAEで行われたアテネオリンピック最終予選のことです。登録メンバー23人中、18人が下痢になってしまった。みんなゲームの直前までトイレに籠もっているような状態でしたが、僕はまったく体調を崩さなかったんです。
母のアドバイスで、遠征中は温かい緑茶と梅干、それに腸内細菌のサプリメントを欠かさずとっていたのが、よかったのかもしれません。緑茶や梅干しには、殺菌作用がありますしね。