意外なほどの味の奥行きに舌鼓
ソースはマーガリンを使用したオリジナルのもので、フォークを入れるとスポンジからも染み出して溢れてくるほどたっぷり。
練乳に例えればいいだろうか。コッテリと甘いソースがカステラのような重ための生地になじみ、脳に直接来るような甘さなのだが、そこに塩漬け卵の柔らかい塩気が顔を出す。
豚肉フレークは、でんぶのような、あるいはさきイカのような食感で、噛むほどに味が染み出してくる。
どっしりしたスポンジにとろりと舌にからみつくソース、乾燥して繊維質な豚肉フレーク、粉っぽくも湿度をはらんだ卵の黄身と、あらゆる食感が詰め込まれ、ユンさんがこだわるようにちょっとした配分で味が変わりそうだ。
いかにもB級グルメっぽい構成に反して味の奥行きが深く、一口を長く楽しめるのが意外でもある。強い甘さを引き立てる塩気のバランスにはどこか懐かしさも感じられる。
「友達と集まって、ゆっくりつまむイメージです」とヴォさん。
「ベトナムではコーヒーを飲むのは男性が多くて、女性はお茶やレモン系の酸味のある飲み物と一緒に食べることが多いと思います」
作ったユンさんは温かいお茶と合わせて食べるのがおすすめだという。
特別にサービスしていただいたベトナムコーヒーとともに味わうと、たっぷりとお茶を飲みながらおしゃべりに興じるベトナムの休日が思い浮かぶよう。
ぶっ飛んだ謎の食べ物かと思いきや、優しい思い出になりそうな食体験となった。
取材・文/宿無の翁
撮影/近藤みどり
ベトナム料理 バコンチャオ2号店 浅草店
住所/東京都台東区西浅草2-25-9