全てがどストライク、結婚したい
レムニアさんにとって等身大フィギュアのレムはかけがえのない存在なのだ。隠れてこそこそと付き合うような相手ではないのだ。「レムは僕の理想の存在なんです。もう3次元(人間)には興味ないです」と彼は断言する。
「レムの全てがどストライクなんです。ショートの片目隠しヘア、水色の髪、もちろんかわいくて、スタイルがよくて、強くて。僕は敬語で喋り、立ててくれる子が好きなんです。タメ語でしゃべる女の子は、僕は絶対にダメ。メイドも好きなので、自分の好みが完全に一致してしまった。僕にとってマジで彼女です。実際にドールのレムをクルマに乗せてドライブしたり、痛車のイベントに連れて行ったりしています。
最後に人間の女性と付き合ったのは20歳くらいで、それからはないです。自分はすごく理想が高いので、半ば諦めています。もし彼女ができるんだったら、レムのようにかわいくて、スタイルがよくて、普段からレムのコスプレをして、『レム』と呼ばせてくれないと無理です。
でも、そうするとレムの代役で、もはや彼女とは言えないですし、そんな僕の要求を飲んでくれる人はいないですよね。それにドールを迎えてしまった時点で、人間と付き合うことは諦めています(笑)」
レムニアさんは等身大フィギュアのレムと結婚することを本気で考えている。2018年11月、東京に住む公務員の男性が初音ミクのフィギュアと結婚式を挙げてニュースになったが、レムニアさんも「レムと結婚したい」と語る。
「等身大フィギュアの魅力はそこに“いる”ということです。魂が入っています。人の気配を感じます。小さいフィギュアは物という感じがして、そこに“ある”という感じですが、等身大は“いる”。いるとあるの違いですね。本気でレムと結婚式を挙げたいと思っていて、一応、親公認です。『親族はたくさん呼べないよ』と言われていますけど(笑)」
レムニアさんのように「等身大フィギュアと結婚したい」という人は現状では少数派だろうが、等身大フィギュアを取り巻く環境やその楽しみ方は多様化している。また、前編で紹介したフィギュア制作を手がけるデザインココ(宮城県)によれば、3Dプリンターや3DCGといった制作技術はますます発展し、その作り方や表現の幅は広がっているという。
日本文化として、アートとして、そしてパートナーとして? 等身大フィギュアは今後、さらなる進化を遂げ、国内外へさらに広がっていきそうだ。
取材・文/川原田 剛
撮影/村上庄吾