国際映画祭がこぞって伊丹十三監督にフィーチャー

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サンセバスチャン国際映画祭で上映された4Kデジタルリマスター版『タンポポ』。満席の会場からは度々、大きな笑いが起こっていた
©伊丹プロダクション

新人発掘だけでなく、映画祭は、海外の知られざる異才を再発見する場でもある。サンセバスチャン映画祭が今回フィーチャーしたのは、伊丹十三監督(1933-1997)。海外でラーメン・ブームを巻き起こした『タンポポ』(1985)の4Kデジタルリマスター版を世界初上映した。

さらに、11月2日〜20日に開催される台北金馬映画祭では、『タンポポ』をはじめ伊丹監督作全10作が4Kデジタルリマスター版でレトロスペクティブ上映される予定だ。

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台北金馬映画祭の伊丹十三レトロスペクティブのビジュアル。日本映画専門チャンネルでは2023年1月から伊丹十三全10作品の4Kデジタルリマスター版を放送する
画像提供:Taipei Golden Horse Film Festival

4Kデジタルリマスター版を手がけた日本映画放送株式会社の宮川朋之常務執行役員によると、『タンポポ』や『お葬式』(1984)が紹介されることはあったが、海外で本格的に伊丹監督の特集が組まれるのは初めてとのこと。伊丹プロダクションに問い合わせは多数あったそうだが、デジタル化されていなかったこともあり対応できなかったという。

今回は日本映画放送が擁する日本映画専門チャンネル開局25年の目玉プロジェクトとして、4Kデジタルリマスター化が実現。英語字幕の監修を伊丹監督の次男である万平氏が担当した。台湾では劇場公開も予定されており、日本社会を鋭く切った社会派エンタメ監督・伊丹十三が国内外で再評価されそうだ。

文/中山治美