臨場感のある音や精神的な怖さも
——音によって恐怖をかき立てられる部分もありました。冒頭で言えば、森を風が抜ける轟音(ごうおん)や、人影が忍び寄る足音など。
暗くしたりして映像であえて情報を見せないと、観客は音を頼りにする。そのときに、足音や息づかいは重要なアイテムになるので、音響にもこだわっています。例えば、“赤い人”の足は血で濡れているので、足音の湿り具合にこだわったりとか。
——ホラー映画のヒロインは、スクリーミング・クイーン(絶叫女王)と呼ばれたりします。悲鳴も怖さをかき立てる要素ですね。
そうですね。でも、本当に驚いた人は息を呑んだりして、声が出なかったりする。だから、あまり叫んでばっかりにならないようにはしています。
——映像、音に加えて、精神的な怖さも多々ありました。個人的には、“赤い人”がベッドの上でピョンピョン跳ねるところが「イヤだー!」と(笑)。
(笑)。あとは仲間が死んで、誰もいなくなる場面は精神的に怖いですよね。ひとりだけになると、急に心細くなるので。修学旅行で怖い話をしてたら、みんな眠っちゃって、自分だけ起きてる——みたいな怖さに近いものがあります(笑)。
監督として「怖い」と思ったこと
——今回撮ってみて感じた、ホラーの難しさとは?
自分が、物差しじゃなくなっちゃうことです。例えば泣けるシーンは、何回編集で見ていても、「こうしたほうが、もっと泣ける」とわかるんです。でも怖いシーンに関しては、一度慣れてしまうと、何を基準にしたらいいのかわからなくなる。だから「怖さの満足度」を高める作業が、すごく難しかったです。
——完成前に試写会を開いて観客の反応を見たそうですが、その意見が参考になりましたか?
試写をしてアンケートを採っても、なかなか事細かに書いてくれる人はいないんですよ。でも、一緒に見ることで感じることはある。「ここはテンポが速すぎて観客の理解が追いついてないな」とか、「ここはちょっとタルいな」とか。それで修正することはあるんですけど、そこも怖さに関しては難しくて。初めて見た人が、どのくらい怖いのかがわからないところが難しくもあり、その難しさが発見でもありました。
——殺されれば殺されるほど青春が輝くというループ型ホラーの構造に新しさを感じました。観客には、どのように感じてもらえるとうれしいですか?
目指したのは、「アトラクションムービー」。恐怖、友情、恋など、いろんな要素を盛り込んで飽きさせないようにしたので、アミューズメントパークでアトラクションを楽しむように見てほしいです。あと、通常のホラー映画よりも、「仲間と一緒に繰り返し見たい」と思えるものになったかなと。そういう映画を目指したし、そこがジャンルとして新しいかなと思います。
——最後に、見た人の声で、一番うれしかった言葉は?
やっぱり「怖かった!」です。青春映画としては自信があったけど、怖いのかどうか確信を持てないままでしたので、そう言われたときは、本当にホッとしましたね(笑)。
取材・文/泊 貴洋
撮影/吉楽洋平
場面写真/©2022 「カラダ探し」製作委員会
『カラダ探し』(2022)
監督/羽住英一郎
原作/ウェルザード『カラダ探し』(エブリスタ)
脚本/土城温美
出演/橋本環奈、眞栄田郷敦、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠、柳俊太郎、西田尚美、柄本佑 ほか
配給/ワーナー・ブラザース映画
7月5日、高校にいるはずのない少女から、「ワタシのカラダ、探して」と言われた明日香(橋本環奈)。その日の深夜0時、気付くと学校にいた彼女は、同じく学校に集められたクラスメイト5人とともに、血で染まった少女“赤い人”によって殺されてしまう。目が覚めると、また同じ7月5日。その日から同じ日を繰り返すことになってしまった6人は恐怖に立ち向かいループを抜け出そうとする……。爽快なラストに感動!
10月14日(金)全国公開
公式HPはこちら https://wwws.warnerbros.co.jp/karadasagashijp/