阪神バッテリーは“どの村上”を想定するのか

対戦するタイガースからすれば、村上を抑えられるか否かがシリーズの行方を左右するわけだから、その状態や心理を察知することは、最重要事項となるだろう。

村上に対する基本的な攻め方は、内角高めを見せて意識させ、外角低めで勝負するというもの。不調時はこれに加え、真ん中高めのボール球を使い、効果的に振らせて抑えてきた。ここに関しては投手の右左は大きく変わらない。

阪神には青柳晃洋、左の伊藤将司といった好投手がいる。青柳の対左打者の基本は内角にスライダー系で意識させ、外角低めにシンカーを落とすというもの。伊藤将は、基本は外角でカウントを稼ぎ、決め球も外角に集める傾向がある。

ポイントとなるのは、阪神バッテリーがシーズン中と同じ攻め方をするのか、それともCSで異なった攻め方をしてくるかどうか。くわえて、“どの時期の村上”を想定して攻めてくるかだ。

不調時はいいように抑えてきたが、はたして3週間近く過ぎても同じ攻め方をしてくるのか。それとも好調時をイメージして慎重に攻めるのか。このあたりの見極めが鍵を握るだろう。

では、村上の方はどうだろう。どのような攻め方をされても、内角の球を叩いて打ち損じ、一塁側ファウルを連発するようなら、まだフォームの修正は十分でないと見るべきだろう。

外角の球も同様で、セカンドゴロやライトへのドライブのかかった打球は、引っ張り傾向の表れで、シーズン終盤の不振だった頃のスイングだ。それは焦りや不安が拭い切れていないということを表す。

逆に外角の投球を引っ張り込まずにセンターからレフトに打ち返すようなシーンが見られるようになれば、復調傾向とみていいだろう。気分的にも落ち着きが戻り、ボールも見えていると判断すべきだ。打球というものはそれだけ正直で、打者の精神面も如実に表すものなのだ。

いずれにせよCSファイナルは、初戦の村上の第一打席がひとつの山になるだろう。その結果である程度、村上の状態が読み取れる。阪神のベンチもスコアラーも、まずはそこに注目しているはずだ。
 
CSファイナルは特異な短期決戦だ。最大6試合、毎日、同じ相手と戦う。それも球場も変えずにだ。日本シリーズならば移動日があるが、それもない。これは想像以上にタフな戦いといえる。とくにファーストシリーズから勝ち上がってきたチームは3、4戦目あたりで集中力が途切れがちだ。

ヤクルトからすればアドバンテージがひとつあるため、1勝すればその時点で2勝計算となる。6試合で3勝すればいいーーそう考えられれば、ヤクルトが圧倒的に有利だ。村上も、そのように楽観的に臨めればいい。ともあれ、勝敗をわけるのは村上の初戦の第一打席。私はそう見ている。

構成/木村公一 写真/小池義弘