きっかけは大友克洋。『カウボーイビバップ』で開けたキャリア
―― 上杉さんが歩んできた25年以上のキャリアを振り返って、大きかったと感じる仕事を教えていただけますか?
大友さんとの一連の仕事と、『カウボーイビバップ』ですね。そもそも大友さんとの出会いがアニメの仕事をするきっかけになったんですよ。
当初、僕は音楽系のデザインばかりやっていて、『ele-king』というテクノ雑誌の仕事をしていたら、そのつながりで「電気グルーヴの石野卓球がソロアルバムを出すのでジャケットをやりませんか?」と声をかけてもらったんです。
喜んで引き受けたところ「実はもう絵柄は決まっていて、大友克洋さんなんです」と。
―― 石野卓球さんの仕事が、大友さんとの出会いのきっかけだったんですね。
そしてアニメの仕事をするようになったきっかけが、大友さんでした。「今映画作ってるんだけど、ポスターがダサいのしか上がってこないんだよ。やってみてくれない?」と言われて、それが『MEMORIES』のポスターだったんです。
ラフは大友さんが作っていたのですが、僕もアイディアを出して大友さんにおもしろがってもらえたし、すごく楽しい仕事でしたね。
―― なるほど!『MEMORIES』がきっかけとなってアニメ業界で上杉さんの名前が知られたわけですね。
アニメ業界というか、バンダイビジュアルというアニメ会社の中で、ですね(笑)。で、次にお話をいただいたのが『カウボーイビバップ』でした。
―― 大友克洋作品の次が、またもや伝説的な作品じゃないですか(笑)。
そうなんですよ。運がいいですよね(笑)。でも、今となっては名作ですけど、当時はまだたくさんある新作アニメの一つでしたから。
―― 『カウボーイビバップ』は各所のグラフィックデザインも印象的で、なかでもLD(レーザーディスク)のデザインは当時衝撃的でした。
音楽が重要なモチーフになっている作品なので、すごくやりやすかったですね。『闇夜のヘヴィ・ロック』っていうサブタイトルはじめ、元ネタという元ネタが全部わかるので(笑)。
だからデザインに関する提案もナベシンさん※におもしろがってもらえたし、特にダメ出しされた記憶がないかもしれないですね。
あのLDジャケットは〈コンテンポラリー・レコード〉というアメリカのジャズレーベルのLPジャケットへのオマージュになっています。「厳密にはビバップじゃなくて西海岸ジャズのレーベルだけど、ジャズっぽさは伝わるだろう」なんて考えながらやっていました(笑)。
※渡辺信一郎:アニメ監督。代表作は『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』等。