子育てコミュニティ「常設」にこだわった理由

東京の世田谷区に戻り、本格的な子育てコミュニティを作り始めます。2001年には、産前産後支援を行う支援グループ『アミーゴ』を設立。松田さんと松田さんの妹、2人が出産した助産院の助産師の3人で活動をスタートしました。

「場所は、妹が見つけてきた無認可保育園でした。2階が保育園として使えないので、貸してもらうことができたんです。長男を1階の保育園に預けて、上に上がって赤ちゃんにおっぱいを上げながらお産の話をする。赤ちゃんサロンの延長のようなものでした。ベビーマッサージやマタニティヨガ、産後の手が足りないお家に、ご飯を作りに行ったりもしました。私も次男をおんぶして行っていましたね。友達のお母さんに手伝ってもらったりもしました」

「せたがや子育てネット」松田妙子さんが地域密着の“サードプレイス”を作り続ける理由【私のウェルネスを探して】_6
「おでかけひろば まーぶる」内の掲示板。

場所を常設にしたのは、「いつでも行ける」「いつでも話せる」場所にしたかったから。さらには家庭で、何かあった人がシェルターとして使えるようにしたかったからでした。

「ボランティアではなくもちろん有料です。賃料が3万円だったので、月5万円が売上の目標でした。続けていくうちに、それが払えるようになったのは嬉しかったですね。NPOになってからは、事業者として受けているので、みんなにお給料を払えるようになりましたが、当時はまずは月5万円くらいはもらえるようになりたいと話していました」

2003年からは、年に1回の子育てイベント『子育てメッセ』をスタート。2004年には、『せたがや子育てネット』がNPO法人化。2010年には、おでかけひろば『ぶりっじ@roka』(芦花公園)を皮切りに、2018年『まーぶる』(瀬田)、2019年『すぷーん』(深沢)、2020年『おりーぶ』(奥沢)と、居場所づくりが続いています。

“ママ”である以前にキャリアを積んだ“才能の塊”

「やっていることは同じことの繰り返し。一番気になるのが、公的な助成をどう受けるかだと思います。それには『こどもの城』や『アミーゴ』で経験したことが役に立っています。『アミーゴ』では広告代理店の関連会社にいた仲間が、書類関係をすべてやってくれました。元々そういった活動に予算がついていることは知っていましたから、あとは適材適所、仲間の中で得意な人やできる人を見つけるだけなんですよね」

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「まーぶる」の定例ミーティングの風景。一部メンバーはリモートでの参加です。

松田さんが繰り返すのは「総合商社」という言葉。みんな“ママ”ではあるけれど、それ以前にいろいろなキャリアや経験を積んできた“才能の塊”でもあることでした。

「学業で何かを成し得た人、エステやフェイシャルトリーメントができる人、洋服を作るのがうまい人、お金に強い人。キャリアが埋もれていました。当時は、ママとして生きることに息苦しさを感じていた人も多かったと思います。仕事を辞めて、育児に専念している人も多かったですから。会社を作れるんじゃないかというレベルで、さまざまな方がいましたね」

今で言うなら、仕事や家庭でもない場所“サードプレイス”を作ることにもつながる人材の活用。それが人生をより豊かにするという考え方は、当時からあったとも言えます。

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「まーぶる」の運営スタッフの皆さんと。バックグラウンドは様々で、「世田谷近隣で子育て経験がある」方が多数。

「そういった場所やコミュニティが『私たちの町になぜないの?』と言われることがよくあります。『それを自分で作るんですよ』と言うんですよね。誰かに『あなたの居場所はここです』と言われてもピンとこない。場は作ったとして、そこに来る人が一緒になって作っていくものなんですよね。その考え方は、この時代に教えられました。場所はどこだっていいんです、バーでも、カフェでも。家とか職場以外に自分のことを話せる場所を作る。誰もが、そんな場所を見つけられるといいなと思います」

松田妙子さんに聞きました

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身体のウェルネスのためにしていること
大貫崇先生の呼吸法

「京都で「呼吸専門サロン ぶりーずぷりーず」をされている大貫先生から教わったものですが、寝転がって、深くゆっくり呼吸をします。不思議と呼吸の回数が減り、始める前より体が柔らかくなっている気がします。緊張していると交感神経が優位になり、不調につながりやすくなってしまうそうです。おでかけひろばのお母さんたちと一緒にやって、ドキドキした気持ちや不安な心を和らげられたらと思います」

心のウェルネスのためにしていること
おいしい甘いものを食べる

「母がケーキ作りが上手なのでケーキも好きですが、メインは和菓子派。全国のいろいろな銘菓を食べるのが好きです。和菓子の中でも、おまんじゅう、あんこ系が好みです。メレンゲ系も好きで、富山の『おわら天玉』も好きです。京都の『阿闍梨餅』、長野・小布施の『栗鹿ノ子』、地元東京なら原宿『瑞穂』の豆大福、浅草の『芋きん』も好きですね」

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撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

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