サブスクが変えた「音楽の聴き方」と、“メディア化”するサマソニの矜持

話題がアーティストのMCに集中? サマソニに見た、SNSとスマホとサブスクによる夏フェスの変化_5
ヘッドライナーを務めたアメリカを代表するラッパー、ポスト・マローン ©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.

――ここ数年でApple MusicやSpotifyといった定額制の音楽ストリーミング・サービス、いわゆる「サブスク」が普及しましたが、その影響をフェスに感じることはありますか?

ありますね。これまではインディー系が好きな人はインディー系ばかりを聴く人が多かったのですが、今はインディーもポップも満遍なく聴く人が増えた印象があります。それはサブスクでの音楽の聴き方がライブの楽しみ方にもつながっている一面があるのではないかと思います。

話題がアーティストのMCに集中? サマソニに見た、SNSとスマホとサブスクによる夏フェスの変化_6
80年代末から活躍するバンド、プライマル・スクリーム。©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.

――その一方、この10年で雑誌を始め既存音楽メディアの力が弱まり、フェスのラインナップが最大のメディア機能を果たしている印象があります。

フェスがいろんなもののハブとして重要になっているのは実感します。以前は、新作のリリースをきっかけにフェス出演し、その後に単独公演を開催する流れがありました。しかし、今はそれが逆転していますね。とくに新人はフェスで話題を作ることができれば国内盤のリリースにつながる印象です。

――サマソニ運営の皆さんは「自分たちが洋楽文化を支えていく」という意識を持ってお仕事されているのでしょうか?

その意識はすごくあります。音楽ファンとして洋楽カルチャーは無くしたくないし、洋楽のアーティストが来なくなってしまうと僕らの仕事自体がなくなっちゃいますし……(笑)。フジロックとサマソニは海外アーティストを呼ぶ2大メジャーフェスなので、この2つが良い意味で共存共栄していくことで、洋楽の来日文化を絶やさないというのは使命だと思っています。

――来日公演といえば、近年、米中関係の悪化によって欧米アーティストの間で中国マーケットの位置付けが低下しているとの指摘もありますが、その影響はあるのでしょうか?

中国の影響は直接的にはないですね。先ほど日本の洋楽マーケットが小さくなっているとは言いましたが、それでも海外アーティストのファン層が確立されている目立つ市場ですし、アーティスト側も依然として日本を重要視しています。

そして、韓国やアジア諸国でも新しいフェスが出来てきてはいますが、日本のフジやサマソニほどバラエティーに富んだ各国アーティストが揃う規模のフェスは他にありません。アーティスト側も「アジアのフェスといえばフジかサマソニ」という認識がありますし、それだけフジロックの26年、サマソニの21年という歴史は大きな意味を持っていると思います。

――ブッキングなどの交渉でやはり円安の影響はありますか?

あります。相当に、あります(苦笑)。今日9月6日時点で1ドル141円になっていて、数十円の変化だけでもブッキング料が相当跳ね上がることもあり、かなり困っていますね…。フェスファンに喜んでもらえるように、チケット代をなるべく抑えて提供できるよう、今後も様々な努力を行っていければと思っています。

――私も今年のサマソニにお客さんとして参加したのですが、長らく忘れていたフェスの楽しさを思い出し、なんとも言えない感慨がありました。

ありがとうございます。もちろん今でもコロナの影響はありますし、プロモーターとしては引き続き大変なのですが、再びサマソニを開けたことで次のアイディアが出てきていますし、僕ら自身も「フェス文化は必要なものだ」と改めて感じました。既に来年に向けて動き出していますので、是非また会場に足を運んでいただきたいと思っています。


取材・文/照沼健太

サマーソニック運営に聞いた、コロナ禍のフェス裏事情はこちら