50周年の節目に伝えたかったのは「愛と感謝」
本書の制作にとりかかる前に、有馬さんは、何度も資料を提供してくれた個人研究者のTさんを始め、たくさんのファンの意見を聞き、本の方向性を考えたそうだ。京都国際マンガミュージアムのトークショーで「昔から、漫画は文学に比べて、一段地位が低いものとして扱われてきました。そして、漫画の中でも少女漫画は、少年漫画にくらべて、より貶められてきた。私はそれをひっくり返したくて闘ってきたのです」とおっしゃった池田理代子氏の言葉が、常に胸の中にあったという。
「ベルばらの50年の闘いを中心に本を作ろうと力んでいたら、池田先生の事務所の方から「『ベルサイユのばら』は、あくまでも娯楽作品なので、楽しい本にしてください」とアドバイスをいただき、目からウロコがどっと落ちました。本のサブタイトルについても、いくつかの案をいただきましたが、その中に「愛と感謝の50周年」というのがあり、「それだ…」と。本を作って売る側の一員として、素晴らしい作品を世に出してくださった池田理代子先生に、そして、『ベルばら』を愛読し続け、本を買ってくださった読者の方々の両方に、愛と感謝を伝える本にしたい…と、目指すところもはっきりしたのです」
50年の歴史のカラーグラビアや豪華な寄稿陣によるエッセイに加え、池田理代子氏ご自身のコメントがふんだんに掲載されているのも本書の特徴のひとつ。これまで周年のたびに何度もコメントは掲載されているが、連載開始50周年を迎えた池田氏からのメッセージは、今までにも増してとても愛にあふれている。
2022年、50周年を迎えてなお、展覧会の発表や新作劇場版アニメの発表などのたびにSNSをバズらせる『ベルサイユのばら』。そのパワーの源である、まっすぐな愛を本書から感じてほしい。
「ずっとファンだった方も、初めて『ベルばら』に触れた方も、この本をきっかけに、もう一度原作を読んでみてくださるとうれしいです。読むたびに新しい発見があるので! ちなみに私が今回、この本を作るために原作を読み返していて一番胸に響いたのは、ルイ16世のこのシーンでした。みなさんのイチオシのシーンも教えてください」
Ⓒ池田理代子プロダクション 取材・文/ハナダミチコ