大ヒット作「出会い系で70人と会って…」著者が印税で開店。「蟹ブックス」の新しい本屋のカタチとは_11
大ヒット作「出会い系で70人と会って…」著者が印税で開店。「蟹ブックス」の新しい本屋のカタチとは_12

お客さんが喜ぶ本を置くことが喜び

オープン時の在庫として約2000冊をそろえた。全て新刊だ。「眺めているだけでワクワクした気持ちになれる本」「自分や他者のことをもっと深く知るための本」「いま生きているこの社会がどうしたらもっといいものになるのかゆっくり考えるための本」を仕入れの軸としているが、条件から外れた本を取り扱わない、というわけでもない。

「くだらないなと思って読み終わる本も私は大好きで。でも、それだけだと本屋としては足りない。自分の胸に深く残るような本も必要だと思うんです。それは素敵な物語で感動したいということではなくて、自分と他者のことを考えるきっかけになるような本。世界情勢も不安で日々揺らいでいるし、私たちの未来というものが安泰ではないというときに呼応するような本は私も好きだし、みなさんにも紹介したいと思うんですよね」

今のところ、インターネット通販や開催イベントの配信は考えていない。理由を尋ねると、「否定的な思いがあるわけではなくて、まずは自分たちの手の届く範囲からやっていきたいんです」と返ってきた。目の前にいるお客さんを大切にしたい、という強い思いがひしひしと伝わってくる。

「お店に足を運んでくれるお客さんが喜ぶ本を置くことが喜びなんですよね。きっとこういう本が合うんじゃないかと考えて提案するのが楽しい。特にここ数年は新しい店をつくる連続でしたが、最初はどんなお客さんが来るかなんてわからない。だからオープン時の品ぞろえって私はいつもあまり面白くないと思っていて。

それは自分の頭の中でしかないから。そこにお客さんが来て、他者とのつながりが生まれて、このお客さんたちと私だからできたお店なんだよねって棚が変わっていくので。微調整をかけ続けて、絶えず棚が変化することが好きですね。だからご近所の方とたくさん交流できたらいいなと思っています」

常に本の先にいる人のことを思う花田さんの言葉が印象的だった。「本も人ですしね。結局、書いている人がいるから。全部人だなぁって思うんですよ」と続ける。花田さんにとって大切なのは、あくまでも人なのだ。

自身で書いた本の売上で本屋をつくって、本を届ける。生まれた売上で新たな本が書けるかもしれないし、それをまた自らの手でも販売できるだろう。

「こういう続け方もあることを、これから本屋をやりたいと思っている人に可能性を感じてもらえたらうれしいですね」

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店内のカウンターが3人の定位置。横並びで作業ができるようにオーダーメイドでつくったという

蟹ブックス
住所:東京都杉並区高円寺南2-48-11 2F
営業時間:12時〜20時(無休)
公式HPはこちら>>

取材・文/高山かおり
撮影/吉楽洋平